セッション情報 シンポジウム3

タイトル 研-14:

後腹膜に発生したdesmoid腫瘍の1例

演者 徳永 健太郎(済生会熊本病院 消化器病センター)
共同演者 久田 友哉(済生会熊本病院 消化器病センター), 工藤 康一(済生会熊本病院 消化器病センター), 今村 治男(済生会熊本病院 消化器病センター), 多田 修治(済生会熊本病院 消化器病センター), 須古 博信(済生会熊本病院 消化器病センター), 廣田 和彦(同・画像診断センター), 浦田 譲治(同・画像診断センター), 神尾 多喜浩(同・病理), 倉本 正文(同・外科), 志垣 信行(同・外科), 魚住 秀昭(魚住クリニック)
抄録 症例は68歳、女性。右下腹部痛で平成18年11月救急外来を受診した。その際の腹部単純CTで盲腸背側の後腹膜内に直径4.5cm大の腫瘤を認め、精査加療目的で入院となった。既往は急性虫垂炎と右肩脂肪腫の手術歴があり、基礎疾患に糖尿病があった。大腸内視鏡検査では盲腸部に異常は認めなかった。腹部超音波検査では病変は約4.5cm大の境界明瞭、辺縁不整、内部不均一な低エコー腫瘤として描出された。腹部造影CTでは腫瘍は動脈相で強く均一に濃染し、遅延相まで増強が持続するパターンであった。造影MRIではT1WIで低信号、T2WIで淡い高信号がわずかに混在する低信号の腫瘍であった。DWIでは高信号で、dynamic studyではCTと同様の造影パターンであった。血管造影では右外腸骨動脈の枝が腫瘍の栄養血管であり腫瘍濃染像を認めた。腫瘍の流出血管は右外腸骨静脈であり、ホルモン産生腫瘍の可能性も考慮し静脈血サンプリングを施行した。病変の良悪性の鑑別のためにFDG-PET検査も行ったところ、病変にSUVmax=7.5の高度集積が認められた。各種腫瘍マーカーやホルモン検査は全て陰性であった。腫瘍の術前の確定診断は困難であり悪性病変の可能性を否定できないため、12月、外科的に腫瘍摘出術が施行された。腫瘍は盲腸背側の後腹膜内に硬い腫瘍として触知され、周囲への浸潤や癒着は認められず、剥離摘出は比較的容易であった。摘出した標本は8×5.5×4.0cmの硬い腫瘍であった。病理では腫瘍は膠原線維束の増殖を主体とした腫瘍であり、周囲の脂肪織に一部浸潤していた。特殊染色ではAzan・Mallory染色で青染、EVG染色で赤染し、膠原線維束の増殖と証明され悪性像は認めなかった。免疫染色ではCD34,c-kit,アクチンいずれも陰性であり、後腹膜に発生したdesmoid腫瘍と診断された。desmoid腫瘍は組織学的には良性であるが、文献的には周囲臓器に浸潤性に発育する事があり、完全摘出例でも再発をきたし易く、術後十分な経過観察が必要である。今回我々は術前診断が困難であった後腹膜に発生したdesmoid腫瘍の1例を経験したので文献的考察を加えて報告する。
索引用語 後腹膜腫瘍, desmoid腫瘍