セッション情報 一般演題

タイトル 221:

診断に苦慮した嚢胞性肝腫瘍の1例

演者 岩根 紳治(佐賀大学 内科学)
共同演者 秋山 巧(佐賀大学 内科学), 有尾 啓介(佐賀大学 内科学), 江口 有一郎(佐賀大学 内科学), 安武 努(佐賀大学 内科学), 尾崎 岩太(佐賀大学 内科学), 水田 敏彦(佐賀大学 内科学), 藤本 一眞(佐賀大学 内科学)
抄録 【はじめに】今回診断に苦慮し,切除標本にて診断しえた嚢胞性肝腫瘍の1例を経験した.【症例】55才男性.近医に糖尿病で通院中であったが,初めてHBs抗原陽性を指摘され腹部エコーを施行された.肝S6に径5cmの腫瘤性病変を認め当院に紹介入院となった.腹痛や発熱はなし.既往歴:15歳時に腹部の手術歴があるが詳細不明.輸血歴:なし.家族歴:弟がHBVキャリアであるが母親は不明.生活歴:特記事項なし.検査所見:HBsAg陽性,HBeAg陰性,HBeAb陽性,HBcAb 13.0 S/CO,HBVDNA <2.6 Logcopies/ml,AST 13 IU/l,ALT 11 IU/lとHBV healthy carrierと考えられた.AFP 2.6 ng/ml,PIVKA-II 17 mAU/ml,CEA 1.5 ng/ml,CA19-9 11 U/mlと各種腫瘍マーカーは陰性.CTにて肝S6に小嚢胞の集簇した45×35 mmの腫瘍を認め,CTAPにて門脈血流が欠損し,CTHAにて腫瘤頭側に増強効果がみられた.鑑別としては蜂巣状の嚢胞性形態からはエキノコッカス症や炎症性偽腫瘍が考えられたが,嚢胞性腺癌などの悪性疾患も否定は出来ず,当院外科にて肝切除を行った.病理組織の結果,Caroli病と診断された.【結語】本症例はHBV healthy carrierに偶然発見されたCaroli病である.Caroli病は末梢性肝内胆管の多発性嚢胞拡張を来たす疾患で,胆管造影検査が診断に有用である.治療としては癌の併発も報告されていることから,monolobar typeであれば切除が選択枝のひとつとなるが,本症例でも胆管造影を行っていれば術前診断が可能であったかもしれない.肝内の嚢胞性腫瘍の鑑別として、Caroli病は念頭に置くべき疾患であると考えられた.
索引用語 カロリ病, 嚢胞性肝腫瘍