セッション情報 一般演題

タイトル 202:

急性肝不全における血清フェリチン値の臨床的意義

演者 小澤 栄介(国立病院機構 長崎医療センター 消化器内科)
共同演者 阿比留 正剛(国立病院機構 長崎医療センター 消化器内科), ハイ 成寛(国立病院機構 長崎医療センター 消化器内科), 立山 雅邦(国立病院機構 長崎医療センター 消化器内科), 宮里 賢(国立病院機構 長崎医療センター 消化器内科), 上平 幸史(国立病院機構 長崎医療センター 消化器内科), 長岡 進矢(国立病院機構 長崎医療センター 消化器内科), 田浦 直太(国立病院機構 長崎医療センター 消化器内科), 大畑 一幸(国立病院機構 長崎医療センター 消化器内科), 矢野 公士(国立病院機構 長崎医療センター 消化器内科), 小森 敦正(国立病院機構 長崎医療センター 消化器内科), 八橋 弘(国立病院機構 長崎医療センター 消化器内科), 石橋 大海(国立病院機構 長崎医療センター 消化器内科)
抄録 【背景と目的】劇症肝不全における広汎肝壊死の成立には細胞障害性T細胞による細胞障害とともに, それらにより活性化されたマクロファージが関与することが示唆されている. 近年, 活性化マクロファージのマーカーである血中可溶性CD163 (sCD163) が劇症肝不全で高値を示すことが報告されている. 今回, 我々はsCD163と同様に活性化マクロファージのマーカーで簡便な臨床検査測定項目である血清フェリチン値 (フェリチン) に注目し, 急性肝不全における血清フェリチン値の臨床的意義を明らかにする目的で検討をおこなった.【対象と方法】対象は2001年1月から2006年6月に当院に入院した劇症肝不全 (FHF) 8例 (HAV 1例, HBV 1例, 薬物性 1例, アルコール性 1例, その他 3例, 原因不明 1例), 急性肝炎重症型 (AHS) 16例 (HAV 6例, HBV 3例, 薬物性 4例, アルコール性 1例, 原因不明 2例), 急性肝炎通常型 (AH) 74例 (HAV 5例, HBV 16例, HCV 3例, HEV 2例, EBV 1例, CMV 2例, 自己免疫 3例, 薬物性 36例, 原因不明 6例), C型慢性肝炎 (CH) 患者 15例. 以上の症例でフェリチンと年齢, 性別, 重症度, 原因, ALT, T-bil, PT, HGF,重症度, 予後などの臨床的因子との関連を検討した.【結果】フェリチンはFHF:20,267.3±7073, AHS:15,236.2±6653.7, AH:2,078.2±504.8であり, それぞれCH:117.7±29.4に比べ有意に高値であった (p<0.01, p<0.01, p<0.01). FHFとAHSはAHよりも有意に高値であった (p<0.01, p<0.01). FHFとAHSとの間には有意差は認められなかった. フェリチンとALT, T-bil, HGFとの間に相関関係が認められ (p<0.01 r=0.683, p<0.01 r=0.567, p<0.01 r=0.406), PTとの間に逆相関が認められた (p<0.01 r=-0.452). さらに, フェリチンとALTの比 (F/A比) を検討したところ, FHFはAHSとAHに比べ有意に高値であった (p<0.05, p<0.01). 死亡例 : 6.70±0.93は生存例 : 1.55±0.20よりも有意に高値であった (p<0.01). 死亡例 (5例) では全症例でF/A比が3以上であった.【結語】フェリチンはFHFおよびAHSで増加しHGFと相関した. 細胞内逸脱フェリチンの影響を除外し活性化マクロファージをより反映させる為に新たに設定したF/A比はFHF, 死亡例で高値を示した. フェリチンの測定とF/A比の検討は急性肝不全の診断と予後予測に有用なマーカーとなりうると考えられた.
索引用語 急性肝不全, フェリチン