セッション情報 一般演題

タイトル 251:

脳死肝移植登録を行うも抗ウイルス療法、腹腔鏡下脾臓摘出術により肝不全を離脱し得た非代償性B型肝硬変の一例

演者 福泉 公仁隆(独立行政法人国立病院機構九州医療センター 肝臓病センター)
共同演者 崎山 裕美子(独立行政法人国立病院機構九州医療センター 肝臓病センター), 新名 雄介(独立行政法人国立病院機構九州医療センター 肝臓病センター), 岩佐 勉(国立病院機構九州医療センター 消化器センター), 吉本 剛(独立行政法人国立病院機構九州医療センター 肝臓病センター), 西 秀博(独立行政法人国立病院機構九州医療センター 肝臓病センター), 武元 良祐(独立行政法人国立病院機構九州医療センター 肝臓病センター), 宮原 稔彦(独立行政法人国立病院機構九州医療センター 肝臓病センター), 和田 幸之(独立行政法人国立病院機構九州医療センター 肝臓病センター), 高見 裕子(独立行政法人国立病院機構九州医療センター 肝臓病センター), 赤星 朋比古(国立病院機構九州医療センター 消化器センター), 原田 直彦(国立病院機構九州医療センター 消化器センター), 池尻 公二(国立病院機構九州医療センター 消化器センター), 才津 秀樹(独立行政法人国立病院機構九州医療センター 肝臓病センター), 中牟田 誠(独立行政法人国立病院機構九州医療センター 肝臓病センター)
抄録 症例は39才男性、平成16年10月より近医で代償性B型肝硬変として加療されていた。平成17年8月よりALTの変動を認め、同年10月に肝予備能の低下、黄疸も出現したため同年10月22日(0病日)に当科へ緊急入院となった。入院時、Child-Pugh score(C-Ps)13点、HBe抗原陽性、HBVDNA量7.6以上log copies/mlを認めた。この時点で腹部CT,腹部USではHCCは認めなかった。非代償性肝硬変症として対症的治療とラミブジン100mg投与を開始した。40病日目には退院、当科外来で経過観察していた。平成18年1月12日(83病日)、HBVDNA量4.5 log copies/mlと抗ウイルス効果を認めるも肝予備能の改善は認めず、腹水の増量、発熱、腹痛も認め、特発性細菌性腹膜炎、腎障害を認め再入院となった。対症的治療を行うも全身状態もさらに悪化、肝不全状態となった。91病日の腹部CTで肝S6に9mm大のHCCを疑う病変も認めた。118病日目、PT28%,T.B5.9mg/dl,Alb2.0g/dl, C-Ps 14点を示した。生体肝移植を検討するもドナー候補がなく、家族と本人の希望もあり121病日に脳死肝移植登録を行った。この時点でYMDD変異ウイルスの出現は認めなかったがHBVDNA量の低下が不良であることよりアデフォビル10mgを追加投与開始した。その後、緩やかに肝予備能の改善を認め、257病日目にはC-Ps 9点に改善を認めたが、腹部CT、MRIにてHCCを疑う所見を認めた。しかし、脾機能亢進症による汎血球減少(血小板数3.4万/μl)も認め、肝癌に対して十分な治療を可能とするため337病日目に当院外科にて腹腔下脾臓摘出術を行った。術後に重大な合併症も認めず、361病日目には、血小板数25.4万/μl、Alb3.2g/dl,T.B0.8mg/l,PT69%と肝予備能の著明な改善を認めた。平成18年3月8日(525病日)脳死肝移植登録1年後にはAlb3.7g/dl,T.B0.8mg/l,PT87%、C-Ps5点、HBVDNA量2.6 log copies/ml未満を示した。現在、HCCの増大は認めず不明瞭なため経過観察を継続している。ラミブジン投与するも十分な効果を得られず肝不全状態を呈し脳死肝移植登録を行った非代償性B型肝硬変症例に、アデフォビルの早期投与や脾摘術を行うことが肝予備能と汎血球減少の改善に有効であることが示唆された。
索引用語 抗ウイルス療法, 腹腔鏡下脾臓摘出術