抄録 |
<はじめに>われわれは遠隔転移を伴う大腸癌症例に経静脈性 (iv)and/or肝動注(HAI) FOLFOX(FX), FOLFIRI(FI)化学療法を施行し腫瘍縮小をはかり積極的に外科的切除をおこなっている。<対象と方法>2004/10当院外科開設以来2006/12までに遠隔転移を伴う大腸癌15例(うち3例(#2、3、10)の初回手術は他医)を治療した。同期間内での大腸癌手術症例はのべ79症例で、結腸癌47例のうち3例に同時性遠隔転移(肝転移のみ2例(#5, 7)、肝・肺・副腎・頚部リンパ節転移1例(#9))、1例に異時性肝転移 (#4)を認めた。また直腸癌32例のうち5例に同時性遠隔転移(肝・肺転移2例(#1, 15)、肺転移2例(#6, 8)、肝転移1例(#12))、3例に異時性肝転移(#11, 13, 14)を認めた。同時性肝転移症例4例(#5, 7, 10, 15)の初回手術時、同時性肝転移1例(#12)と異時性肝転移2例(#13, 14)の肝切除時に肝動注カテーテルを設置した。化学療法はFX, FIを経静脈性では標準投与量の0.8倍量を、動注では0.5倍量を投与した。治療効果判定はRECIST、有害事象評価はCTCAEで行った。<結果>(1) 7例でiv-FX, iv-FIを計3から13回施行し、2例(#1,#2)はPDで死亡した。5例はSD(縮小傾向あり)で追加手術を施行したが、#3では術後15か月目に局所再発し放射線治療を施行予定、#8は手術時胸膜播種を認め胸水貯留状態、#4, #9では他の遠隔転移を生じ追加化学療法中である。#6では再発はない。有害事象は3例では認めていないが、4例でGrade(G)1-G2の食欲不振と3例でG2のWBC減少を認めた。(2) 4例でHAI-FX, HAI-FIを計3から14回施行した。#5は多発肝転移で当初PRであったがPDとなり治療開始後14か月で死亡した。#7はPRでG1の食欲不振あったが、2回の追加手術で肝転移21個を切除した。#10は動注時疼痛あり不完全投与でPD、#15は有害事象なく現在肝転移はPR、肺転移はSDである。(3)#12-14でiv-FX後肝転移を切除したが、PR, SD, PDがそれぞれ1例で、有害事象はG1食欲不振1例とG2のWBC減少1例を認めた。肝切除後HAI-FXを施行しているが有害事象を認めていない。<結語>肝動注化学療法は経静脈性投与に比し投与量を減少でき、効果も同等で有害事象もほとんどなく忍容性が高く肝転移に対する有効な治療法と考えられる。 |