セッション情報 一般演題

タイトル 240:

保存的加療が奏効した成人腸回転異常を伴う上腸間膜静脈血栓症の1例

演者 錦織 英史(国家公務員共済組合連合会 新別府病院 消化器科)
共同演者 杉田 光司(国家公務員共済組合連合会 新別府病院 消化器科), 後藤 康彦(国家公務員共済組合連合会 新別府病院 消化器科), 沖田 敬(国家公務員共済組合連合会 新別府病院 消化器科), 中川 晴雄(国家公務員共済組合連合会 新別府病院 消化器科), 香川 浩一(国家公務員共済組合連合会 新別府病院 消化器科), 島田 隆一(同 放射線科), 岡原 美香(同 放射線科), 上田 真也(同 放射線科)
抄録 症例は65歳男性で2005年12月2日より嘔吐が出現した。次第に嘔吐が頻回となり腹痛、発熱も出現したため12月4日近医受診し入院となった。加療を受けるも改善無く12月5日当院紹介受診となった。WBC 12100/μl、CRP 28 mg/dlと高値であり、造影CTにて腸回転異常と上腸間膜静脈内に血栓および静脈の肥厚、周囲の脂肪織濃度上昇を認め血栓性静脈炎の所見であった。血液検査上、凝固抑制因子異常やその他の合併症は認めず、腸回転異常に合併した上腸間膜静脈血栓症と診断した。腸管の壊死はなかったことから血栓溶解療法を中心に保存的加療をおこなった。上腸間膜動脈にカテーテルを留置し、ウロキナーゼ、MEPM 2.0 g/dayの投与を行い、ヘパリンの全身投与を行った。血液検査およびCTで経過観察を行いながら、ワーファリン内服へ移行した。約1ヶ月で血栓はほぼ消失し退院となった。現在まで5ヶ月間、再発無く外来経過観察中である。〔考察〕上腸間膜静脈血栓症は比較的まれな疾患であり診断が遅れる傾向にある。腸管壊死に陥ると外科的治療を要するが、死亡率も57.9%と高率といわれる。一方、腸回転異常症は胎生期の腸管回転が正常に終了しないために生ずる先天性疾患であり、新生児期に発見されることが多く、成人発症例はまれである。本例は上腸間膜動脈からの血管造影において、造影剤は側副血行路を介して還流しており、腸回転異常症に伴う慢性の血流障害があったことが示唆された。腸回転異常症と上腸間膜静脈血栓症の合併は極めてまれで、検索できた限りでは小児で1例の報告があったのみであった。今回、我々は成人腸回転異常を伴った上腸間膜静脈血栓症を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。
索引用語 上腸間膜静脈血栓症, 腸回転異常症