セッション情報 ワークショップ1

タイトル W1-06:

IACA6年後に残存直腸粘膜に発生したcolitic cancerの一症例

演者 大津 智(大分大学医学部付属病院消化器内科)
共同演者 小野 英樹(大分大学医学部付属病院消化器内科), 平島 徹朗(大分大学医学部付属病院消化器内科), 八坂 成暁(大分大学医学部付属病院消化器内科), 小野 雅美(大分大学医学部付属病院消化器内科), 沖本 忠義(大分大学医学部付属病院消化器内科), 児玉 雅明(大分大学医学部付属病院消化器内科), 村上 和成(大分大学医学部付属病院消化器内科)
抄録 症例は49歳男性。主訴は下血と肛門部痛。1976年(19歳時)に潰瘍性大腸炎と診断され、21歳時、25歳時には増悪を認め入院加療を受けた。以後外来にてコントロール可能であったが、2001年4月末に再燃し当科第1回入院。全結腸型の炎症を認めた。TPN、ステロイドによる加療を行うもステロイド抵抗性であり、1ヵ月後に穿孔を来たし緊急手術となった。二期的にIACAが施行された。それ以降は外来にて定期的なフォローを行っていたが、2007年2月中旬から下血の量が増え、排便時の痛みも増強するようになり3月5日当科入院となった。入院時検査においてはヘモグロビンの低下(10.3mg/dl)を認めるも炎症反応は陰性であった。入院時内視鏡所見では内視鏡挿入時にすでに残存直腸からoozingの多発を認めた。粘膜所見は後壁に平坦な陥凹を認めその他の部位には浮腫状の変化を認めた。回腸pauchはintactであった。当初残存直腸の潰瘍性大腸炎再燃と判断しステロイド注腸にて加療を開始した。1週間後の確認内視鏡では所見として大きな変化はなく、生検を、吻合部、後壁陥凹部分、その対側、右側、左側と5箇所行ったところ、前4者から高分化のadenocarcinomaを認め、外科紹介となった。Colitic cancerの累積発癌率はEadenらによると10年で1.6%、20年で8.3%、30年で18.4%と報告されており、サーベイランスの重要性が認識されている。本症例は術後残存直腸に高分化癌を認めた稀な症例であるものと考えられ、若干の文献的考察を加え報告する。
索引用語 潰瘍性大腸炎, Colitic cancer