セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

肝臓-症例報告1

タイトル 消P-732:

関節リウマチに対する免疫抑制剤、生物学的製剤によりde novo B型劇症肝炎を発症した1例

演者 藤原 直人(関東中央病院・消化器内科)
共同演者 小池 幸弘(関東中央病院・消化器内科), 川瀬 建夫(関東中央病院・消化器内科), 小池 和彦(東京大・消化器内科)
抄録 【症例】54歳、男性【主訴】全身倦怠感、黄疸【現病歴】32歳時より関節リウマチで通院中。4月18日、発熱、食欲不振、上腹部痛出現。19日近医受診し抗生剤投与を受けたが軽快せず。22日当院内科受診。AST/ALT 1257/2594IU/L、ALP/γGTP 422/363IU/L、身体所見から総胆管結石疑いでMRI施行。結石ないが総胆管結石passingによる胆管炎疑いで帰宅。26日当院再診し、肝機能の悪化、HBs抗原陽性、I度肝性脳症を認めたためにB型急性肝炎の診断で入院。【既往歴】32歳 関節リウマチ、人口関節置換術を計5回施行、53歳 気管支拡張症、慢性気道感染【家族歴】母・兄HBVキャリア【内服】プレドニゾロン5mg 朝・夕、メトトレキセート、タクロリムス、アダリムマブなど【検査所見】AST/ALT577/1392IU/L、ALP/γGTP422/363IU/L、TB9.9mg/dL、PT27%、HBs-Ag(+)、HBV-DNA 8.8Log copy/mL【入院後経過】入院後II度肝性脳症を来たしたためB型劇症肝炎と診断。肝移植はドナーがいなかった。Entecavir 0.5mg/日、ステロイドパルス療法、持続血液濾過透析、血漿交換を行った。5月1日、気管支拡張症からと考えられる肺胞出血を来たし、気管挿管を行った。その後も意識状態は改善せず、5月11日死亡。【考察】発症までに計5回人工関節置換術を行っている。3回目手術まではHBs抗原陰性、HBe抗体陽性であったが、4回目手術時HBs抗原陽性、HBV-DNA 3.1 Log copy/mLとなっている。同時期に関節リウマチに対してタクロリムス開始、また劇症肝炎発症6か月前にアドリムマブを開始していることから同薬剤によるde novo B型劇症肝炎と考えられる。HBVキャリアの悪性リンパ腫に対するR-CHOP療法時のreactivationの報告は多いが生物学的製剤によるHBV reactivationで劇症肝炎死亡報告はごくわずかである。今後広範な分野で免疫抑制剤・生物学的製剤が使用されることを考えると投与前のHBV検査及び核酸アナログ製剤の予防的投与の重要性が示唆された。
索引用語 劇症肝炎, 生物学的製剤