セッション情報 | パネルディスカッション6(消化吸収学会・消化器病学会・消化器内視鏡学会・消化器外科学会合同)消化吸収の側面からみた炎症性腸疾患の病態と栄養療法 |
---|---|
タイトル | 消PD6-6:重症潰瘍性大腸炎に対する経腸栄養剤投与の有用性 |
演者 | 山本 壽恵(横浜市立大市民総合医療センター・炎症性腸疾患センター) |
共同演者 | 国崎 玲子(横浜市立大市民総合医療センター・炎症性腸疾患センター), 前田 愼(横浜市立大・消化器内科) |
抄録 | 【背景】活動期潰瘍性大腸炎(UC)では薬物治療に加え粘膜治癒に十分な栄養管理が必須である.重症UCでは絶食下に中心静脈栄養(TPN)管理を行うが,bacterial translocationに基づく感染や肝障害,血栓等合併症が問題となる.一方近年登場した即効性の高い免疫抑制療法により,重症UCでも長期TPNを回避できる可能性がある. 【目的】急性期重症UCに対する経腸栄養剤(EN)投与の安全性,有用性を検討する. 【対象と方法】2009年4月から2012年3月に当院に入院した重症UC(臨床重症度分類重症かつEndoscopic activity index (EAI)*10以上)のうち,緊急手術を要する劇症および大量出血例を除外した38例を対象とした.高度の腹痛,顕血便の消失を確認し経腸栄養剤(EN:原則としてElemental Diet(ED))経口投与を開始,腹部症状悪化のないことを確認し食事に移行しENを中止した.ENを投与しなかった群(非EN群)と比較し,EN群における安全性,有用性を後方視的に検討した. 【成績】EN群21例,非EN群17例.入院からEN開始までの日数14(3~43)日,EN摂取量600(300~2400)kcal.入院時患者背景は,非EN群で年齢が有意に低い(EN群43(13~73),非EN群31(16~52)歳)以外,両群で罹患期間,薬物治療歴,入院時CAI,EAI,栄養指標(血清Alb,ChE)に差を認めなかった.TPN施行日数はEN群17(0~41),非EN群31(11~62)日とEN群で有意に短期で,EN群の6例(29%)はTPN回避可能だった.EN開始後,3例(14%)で下痢・血便・腹痛などの腹部症状の悪化を認め,2例はEN中止とその後手術を要したが,18例(86%)では腹部症状が改善した.入院2週間後,ChEは非EN群で有意に低下し,EN群は非EN群に比べて肝障害が軽度であった. 【結論】重症UCにおいても,腹部症状の悪化を認めずENを安全に投与可能で長期TPN管理を回避できる症例がある.ENにより栄養状態を維持するとともにカテーテル関連合併症の減少につながる可能性が示唆された.*Naganuma M, et al. J Gastroenterol. 2010;45:936-943. |
索引用語 | 潰瘍性大腸炎, 経腸栄養 |