セッション情報 一般演題

タイトル 89:

Indeterminate colitis として経過観察し発症6年後に診断し得たCrohn病の一例

演者 松尾 静香(福岡大学 筑紫病院 消化器科)
共同演者 平井 郁仁(福岡大学 筑紫病院 消化器科), 村上 右児(福岡大学 筑紫病院 消化器科), 津田 純郎(福岡大学 筑紫病院 消化器科), 松井 敏幸(福岡大学 筑紫病院 消化器科), 西俣 伸亮(福岡大学 筑紫病院 病理部), 岩下 明徳(福岡大学 筑紫病院 病理部)
抄録 症例は30歳代の男性。1997年より1日2-3行の下痢が出現し、2000年より排便回数の増加、体重減少を認めた。同年4月 肛門痛のため前医受診し、肛門周囲膿瘍を指摘された。注腸X線検査で全大腸に粗ぞう粘膜,ハウストラ消失、S状結腸内視鏡検査では直腸より連続性に粘膜粗ぞう血管透見像消失を認め、潰瘍性大腸炎(以下UC)が疑われ、精査加療目的で当科紹介となった。上部消化管内視鏡検査で胃に竹の節状所見,アフタ,十二指腸球部にびらんを指摘され、各病変より生検を行われたがgranulomaは検出されなかった。また、経口法小腸X線検査では明らかな病変は指摘できなかった。以上よりIndeterminate colitis(以下IND)として経過観察され、5-ASA内服のみでほぼ無症状で経過していた。経過中に2回の内視鏡検査を行い、Crohn病(以後、CD)疑診例として厳重なフォローが行われていた。2006年3月下旬、発熱,血便を認めるようになり、5月上旬、症状増悪および肛門病変の悪化を認めた。抗生剤を投与されたが、症状改善しないため当科紹介となった。下部消化管内視鏡検査および注腸X線検査で横行結腸に縦走潰瘍,敷石像,下行結腸からS状結腸にかけて縦走傾向のアフタ,不整形潰瘍を認め、CDの典型的な病変を認めた。その際の生検でgranulomaを認め、CDと確定診断した。PSL 30mg/日を投与されたが症状および炎症所見は軽快せず、追加治療が必要と判断され、6月Infliximabを開始し、症状軽快し退院となった。現在8週毎のscheduled maintainance therapy中である。INDは、CDとUCの両者の特徴を合わせ持つ、鑑別診断困難例とされ、炎症性腸疾患の3-5%に見られる。長期経過観察中に確定診断されることもあり、今回、我々は発症6年後に診断し得た1例を経験したので、若干の文献的考察を加えて報告する。                
索引用語 Indeterminate colitis, 炎症性腸疾患