抄録 |
【はじめに】若年性の肝脾腫、門脈圧亢進症の原因疾患のひとつとして、先天性肝線維症(Congenital hepatic fibrosis;CHF)が古くから知られているが、その症例数は少なく、実際の臨床場面で遭遇する機会は少ない。我々は、尿路感染症を契機として発見された先天性肝線維症の一例を経験したので、若干の文献的考察を加えて報告する。【症例】25歳女性。主訴;発熱、腰背部痛。既往歴;22歳と24歳時に卵巣出血。飲酒歴・喫煙歴・輸血歴なし。現病歴;2005年2月上旬から排尿時違和感あり、2/14から発熱、腰背部痛を自覚。当院救急外来を受診、急性腎盂腎炎の診断にて当院内科入院となる。入院後に撮影された腹部CTにて肝脾腫を指摘され、当科紹介。身体所見;身長157.6cm、体重51.8kg。腹部触診上、肝腫大および脾腫が認められた。検査所見上、血小板の著減(90,000/μl)を認めた。肝機能異常は認められなかった。画像所見;腹部CT上、著明な脾腫、及び肝内胆管~総胆管のびまん性拡張が認められた。MRCP上、胆管拡張の閉塞機転は指摘できなかった。上部消化管内視鏡(GIF)上、F1の白色静脈瘤が認められた。以上の所見から、先天性肝線維症が疑われた。腎盂腎炎治癒後も血小板減少状態継続するため、脾摘による血小板増加を勧め、4/14に当院外科にて脾臓摘出施行。同時に施行された肝生検にて、P-P bridgeを形成し拡大したグリソン鞘と異常胆管の増生が認められ、先天性肝線維症と診断確定した。脾摘後は血小板増加が認められた。【考察】先天性肝線維症は、胆管系中心の病変と考えられているが、多くの場合、肝内門脈枝の低形成がみられ、これが門脈圧亢進症の原因ではないかと考えられている。病態としては門脈圧亢進症が問題となるため、それに準じた治療法が行われることが多い。本症例は、脾機能亢進が著明であり、血小板減少に対して脾摘を行い、良好な結果が得られた。 |