セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

肝臓-症例報告1

タイトル 消P-734:

健常人に発症した単純ヘルペスウィルスによる急性肝不全の二症例

演者 中 悠(大阪医大・2内科)
共同演者 津田 泰宏(大阪医大・2内科), 福井 秀雄(大阪医大・2内科), 福西 新弥(大阪医大・2内科), 朝井 章(大阪医大・2内科), 宮地 克彦(大阪医大・2内科), 藤原 新也(大阪医大・2内科), 林 道廣(大阪医大・一般・消化器外科), 福田 彰(大阪医大・2内科), 樋口 和秀(大阪医大・2内科)
抄録 【はじめに】単純ヘルペスウィルス(HSV)は、新生児や妊婦、免疫抑制剤投与時には時に全身感染症から急性肝不全を生じるが、健常人における報告は本邦ではほとんどなく不明なことが多い。今回、健常人におけるHSV関連急性肝不全症例を2例経験したため報告する。【症例】症例1は30歳代、女性。平成18年12月上旬に発熱、感冒様症状出現、感冒薬を処方されていたが、症状改善なく近医の血液検査にて肝障害を認めた(AST 2703 U/l, ALT 2943 U/l, PT 60.3%)。近医入院後、39度台の発熱、皮疹及び肝障害、黄疸の進行、PTの低下を認めたため当科転院。血漿交換、肝庇護療法を施行するも第3病日より肝性昏睡出現し、第4病日生体肝移植施行された。しかし全身状態、意識レベル共に改善せず移植後4日後に永眠された。摘出肝の免疫染色で単純ヘルペスウィルスが陽性であった。症例2は50歳代、女性。平成23年8月中旬より発熱、吐き気、外陰部痛を認め、尿路感染症疑いにて近医入院となるもAST 9075 U/l, ALT 4481 U/l, PT 22.6%と急激な肝酵素の上昇を認め当科転院。第2病日よりII度の肝性脳症を認めたため血漿交換、持続透析導入となった。肝移植が検討されていたが39度以上の高熱と白血球の上昇や皮疹、消化管出血、腎障害など全身症状が急激に悪化した。第4病日血清IgMHSV抗体陽性が判明、アシクロビルの先行投与の効果なく第7病日永眠された。剖検肝は広範囲な肝細胞壊死が認められ、免疫染色で単純ヘルペスウィルス陽性であった。【まとめ】文献ではHSVによる急性肝不全は全体の2%程度と希であるが、約3/4の症例が急速に進行するとされ、その致死率は90%に達するとの報告がある。一方で肝移植にて生存率約40%との報告もあり、できるだけ早期のアシクロビル投与と肝移植が救命には必須である。しかし本症例の如く健常人に発症した場合は早期診断が非常に難しく、非常に教訓的な症例と考えられたため報告する。
索引用語 急性肝不全, 単純ヘルペスウィルス感染