セッション情報 一般演題

タイトル 98:

Pyodermatitis-pyostomatitis vegetans(PD-PSV)を合併した潰瘍性大腸炎の1例

演者 井上 直樹(長崎大学 医学部 第2内科)
共同演者 三嶋 亮介(長崎大学 医学部 第2内科), 磯本 一(長崎大学 医学部 第2内科), 宿輪 三郎(長崎大学医学部・歯学部附属病院 光学医療診療部), 水田 陽平(長崎大学 医学部 第2内科), 河野 茂(長崎大学 医学部 第2内科)
抄録 【目的】潰瘍性大腸炎やクローン病における皮膚合併症としては,壊疽性膿皮症や結節性紅斑などが挙げられる.さらに稀な合併症としてPyodermatitis-pyostomatitis vegetans(PD-PSV)と呼ばれる,増殖性膿疱性皮膚病変と口腔粘膜疹を来たす疾患の存在が報告されている.今回我々は本症と考えられる症例を経験したので報告する.【症例】症例は18才,女性.2006年7月より1日2,3回の下痢症状が出現.さらに8月10日より頭部から頚部,胸背部にかけて水疱形成がみられ,拡大していった.さらに発熱も伴ってきたため,8月22日近医へ入院.膿痂疹と考え,複数の抗生剤を投与するも不変.さらに1日4,5回の血性下痢も認めるようになった.9月に入り,口腔内小膿疱,下腿浮腫も出現したため,精査加療目的に9月4日当院皮膚科紹介入院となった.下痢,血便を認めることから,当科にて大腸内視鏡検査施行したところ,直腸から横行結腸にかけて浮腫,発赤,易出血性伴う粗雑な粘膜を認め,臨床症状,検査所見より潰瘍性大腸炎と診断した.皮膚所見は口腔粘膜疹の存在,蛍光抗体法陰性,抗デスモグレイン陰性,抗表皮基底膜抗体陰性などから,潰瘍性大腸炎に合併したPD-PSVと診断した.絶食・中心静脈栄養管理にした上で,prednisolone,5‐ASA,AZP,LCAPなどによる治療により,腸管症状と皮膚所見は改善した.【考察】PD-PSVは臨床的、病理組織学的に増殖性天疱瘡とほぼ同様の所見を呈しながら,蛍光抗体法で陰性か弱い陽性所見しか呈さない,炎症性腸疾患に伴う皮膚粘膜病変として認識されている.本症はこれまで15例(皮膚病変と口腔粘膜病変をともに認め,かつ蛍光抗体法まで施行された症例に限る)しか報告がない稀な疾患であり,そのうちの8例に潰瘍性大腸炎を,2例にクローン病を認めている.治療についてはステロイドや免疫抑制剤が著効するという報告が多い.【結語】PD-PSVに類似の皮膚粘膜病変をみた場合は,炎症性腸疾患を念頭に腸管病変の検索を行うべきである.
索引用語 潰瘍性大腸炎, 合併症