共同演者 |
前田 和弘(福岡大学 医学部 消化器内科), 江口 浩一(福岡大学 医学部 消化器内科), 西村 宏達(福岡大学 医学部 消化器内科), 冨岡 禎隆(福岡大学 医学部 消化器内科), 森田 勇(福岡大学 医学部 消化器内科), 林 由浩(福岡大学 医学部 消化器内科), 酒井 真志(福岡大学 医学部 消化器内科), 藤枝 友子(福岡大学 医学部 消化器内科), 猪俣 絵里子(福岡大学 医学部 消化器内科), 今村 祥子(福岡大学 医学部 消化器内科), 宮本 久督(福岡大学 医学部 消化器内科), 青柳 邦彦(福岡大学 医学部 消化器内科), 向坂 彰太郎(福岡大学 医学部 消化器内科), 宗像 光輝(福岡大学 医学部 呼吸乳腺小児外科), 白石 武史(福岡大学 医学部 呼吸乳腺小児外科), 山下 裕一(福岡大学 医学部 呼吸乳腺小児外科), 二村 聡(福岡大学 医学部 病理学) |
抄録 |
症例は66歳、男性。2006年2月頃より発熱が出現し、縦隔炎の診断にて当院救命センター搬送となった。症状改善後、縦隔炎原因検索のため上部消化管内視鏡検査を施行したところ下部食道に隆起性病変を認め、当科入院となった。上部消化管内視鏡では切歯より33cmに立ち上がりの比較的なだらかな表面結節状隆起を数個認めた。また主病変の周囲には淡い発赤調の粘膜を伴っていた。主病変と周囲の発赤粘膜は全体にヨード不染であった。上部消化管造影検査では、胸部下部食道に陥凹を伴う表面結節状の不整形隆起性病変として描出された。側面像では側面変形を認め、深達度は粘膜下層以深であると診断した。生検にて大部分は扁平上皮癌であったが、一部に食道類基底細胞癌を示唆する所見も認めた。当院外科にて食道亜全摘+胃管再建術を施行した。切除標本では、腫瘤部の一部には上皮内に扁平上皮癌を認めたが、上皮下浸潤部には扁平上皮癌とは異なる成分が増殖し、篩い状構造を示す胞巣も散見された。また、胞巣内部にはPAS陽性沈着物が散見された。以上の特徴的な所見から食道原発の類基底細胞・扁平上皮癌と診断した(Lt, type5c, mp, pT2, ly1, v1)。主病変周囲の発赤調粘膜はすべてdysplasiaであった。本症例は食道類基底細胞癌に特徴的な癌胞巣が上皮を挙上させるために生じる腫瘍表面の結節状発育を認めていた。また、食道類基底細胞癌は全食道癌の0.4%といわれ、稀な疾患である。正常食道粘膜に覆われた粘膜下腫瘍様隆起と周囲に進展するIIc面を伴っていることが特徴的な所見である。比較的まれな食道類基底細胞癌の一例を経験したので報告する。 |