セッション情報 | ワークショップ1 |
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タイトル | W1-07:潰瘍性大腸炎における大腸癌サーベイランスを考える上で教訓的であった2症例 |
演者 | 芳川 一郎(産業医科大学 内視鏡部) |
共同演者 | 前川 智(産業医科大学 消化器・代謝内科), 田口 雅史(産業医科大学 消化器・代謝内科), 山崎 雅弘(産業医科大学 消化器・代謝内科), 久米 恵一郎(産業医科大学 消化器・代謝内科), 大槻 眞(産業医科大学 消化器・代謝内科) |
抄録 | 全結腸型潰瘍性大腸炎(UC)は、発症後10年以上経過すると高率に大腸癌を合併することが知られているが、そのサーベイランスの方法については十分なエビデンスがない。UCにおける大腸癌サーベイランスを考える上で教訓的であった症例を経験したので報告する。 (症例1)41歳の女性で腹痛を主訴に受診した。25歳時に下痢、粘血便、腹痛のため当科を初診し全結腸型UCと診断されステロイド内服等により加療され軽快した。その後緩解状態にあったが28歳時に再燃あり同様の治療で軽快した。32歳時よりは患者の都合により自宅近くの病院に転院した。転院先の病院でも再燃なく経過良好であったため自己判断で36歳時よりは通院を中止していた。時々下痢をしていたが1ヶ月前よりは水様便が1日10回と増加し、腹痛が増強したため当科救急外来を受診し入院となった。腹部は膨満しており全体に圧痛を認め腸音は低下していた。前処置なしで直腸内視鏡検査を施行したところ肛門より15cmの部位に全周性の狭窄を認めた。入院翌日左半結腸切除術が施行された。4型直腸癌mucinous adenocarcinomaで腹膜播種を認め、術後7ヶ月で死亡した。 (症例2)症例は61歳の女性で主訴は粘血便である。42歳時に全結腸型UCと診断され入院加療された。退院後は経過良好であったが、50歳、55歳、57歳時に再燃のため入院加療を受けた。大腸癌サーベイランス目的で全結腸内視鏡検査を施行した。内視鏡検査では、緩解期UCであり、5点生検が行われたがdysplasiaは認めなかった。約4年間再燃を認めていなかったが、内視鏡検査2週間後より1日5、6回の粘血便がはじまった。臨床症状、直腸鏡検査よりUC再燃と診断された。 症例1は、大腸癌サーベイランスを施行することができず、全結腸型UC発症16年後にcolitic cancerにより不幸な転帰をとった症例である。症例2は、全結腸型UC発症19年後に施行したサーベイランス目的の内視鏡検査の直後にUCが再燃した症例であり、内視鏡検査が再燃の誘因となった可能性が考えられた。 |
索引用語 | colitic cancer, 潰瘍性大腸炎 |