セッション情報 一般演題

タイトル 96:

白血球除去療法を必要とした潰瘍性大腸炎術後難治性回腸嚢炎の一例

演者 黒木 博介(福岡大学 筑紫病院 外科)
共同演者 石橋 由紀子(福岡大学 筑紫病院 外科), 東 大二郎(福岡大学 筑紫病院 外科), 河原 一雅(福岡大学 筑紫病院 外科), 紙谷 孝則(福岡大学 筑紫病院 外科), 関 克典(福岡大学 筑紫病院 外科), 成富 一哉(福岡大学 筑紫病院 外科), 永川 祐二(福岡大学 筑紫病院 外科), 平野 憲二(福岡大学 筑紫病院 外科), 富安 孝成(福岡大学 筑紫病院 外科), 下村 保(福岡大学 筑紫病院 外科), 新居 かおり(福岡大学 筑紫病院 外科), 二見 喜太郎(福岡大学 筑紫病院 外科)
抄録 症例は57歳男性.46歳時下痢,下血にて発症.潰瘍性大腸炎の診断で,内科的治療として,総ステロイド投与量12972mg ,GCAP(5回)を受けた.難治を理由に,54歳時手術適応となり,分割手術の一期目として全結腸切除,回腸ストーマ造設術を行い,6ヵ月後再建術(残存直腸切除,回腸嚢肛門管吻合)を行った.退院後は良好に経過していたが,再建術後8ヶ月目より腹痛,排便回数が増加し,便の性状も水様となった.内視鏡検査にて回腸嚢内にびらんを認めた.回腸嚢炎の診断でメトロニダゾールを投与し,排便回数は軽減,性状も水様便から軟便へと改善した.メトロニダゾールは症状により投薬,休薬を繰り返し経過していたが,回腸嚢炎治療開始後9ヶ月目に再び症状増悪(腹痛,排便回数増加,性状が水様)し入院加療となった.入院後約1ヶ月間,5ASA,ステロイド注腸療法を施行したが改善せず, LCAP治療を導入した.1回目施行後より自覚症状(腹痛)改善し,4回施行後内視鏡検査所見も改善を認め退院となった. 退院後も維持療法としてLCAP治療を4週に1回継続中である.1985年7月より2005年12月まで当科にて外科治療を行った潰瘍性大腸炎患者は120例で,これらの症例を厚生労働省研究班による回腸嚢炎診断基準案に沿って検討すると,回腸嚢炎は15例であった.症状としては排便回数の増加がもっとも多く(8例),発生時期においては13例が再建後5年以内に発症していた.治療としては抗生剤(フラジール,シプロキサン)投与を第一選択としており,効果がみられない場合5ASA,SASP,PSLによる治療を行なっているが,本症例はこれらの治療にも抵抗性であったため白血球除去療法を導入した.潰瘍性大腸炎術後回腸嚢炎でLCAP療法を導入し,奏功した症例を経験したので文献的考察を加え報告する.
索引用語 潰瘍性大腸炎, 回腸嚢炎