セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

肝臓-症例報告2

タイトル 消P-737:

肝細胞癌を合併したWilson病の小児例

演者 石毛 崇(群馬大大学院・小児科学)
共同演者 羽鳥 麗子(群馬大大学院・小児科学), 龍城 真衣子(パルこどもクリニック), 友政 剛(国立高崎総合医療センター), 朝永 博康(群馬大大学院・小児科学), 荒川 浩一(群馬大大学院・小児科学)
抄録 【背景】Wilson病における肝細胞癌・胆管細胞癌の症例報告が散見されるが、その多くは高齢発症であり、同疾患が悪性疾患の発生素地となるかについては定かではない。今回、小児期に肝細胞癌を併発し不幸の転帰をとったWilson病症例を経験した。【症例】14歳、男児。既往歴に気管支喘息。母は児を妊娠中(24歳)に乳癌を発症、児が10歳時に死亡。児は1歳の時に肝腫大を指摘され、当院紹介。採血にて血小板減少、PT軽度延長を認め、肝脾腫を認めたことから同疾患に伴う肝硬変と診断された。遺伝子検査では13q Exon18にD1296N変異を認めた。以後、硫酸亜鉛・トリエンチンでの治療を行い、肝硬変の悪化なく経過していた。5歳時の肝生検では門脈域付近の拡張、Bridging fibrosis、小葉内focal necrosisを認めた。今回、13歳10ヶ月時より倦怠感が出現、11ヶ月に腹部膨満が見られ当院を受診。肝不全を疑い入院となった。【入院後経過】NH3 120ug/dl、腹水著明であり、肝硬変Child-Pugh Bと診断した。MRIにて門脈腫瘍塞栓を伴う径11cmの腫瘤を肝右葉に認め、肝細胞癌と診断した。肺転移を伴い肝移植適応外と判断し、緩和医療を行い、2ヵ月後に永眠された。死後肝病理所見では未分化~中分化肝細胞癌に矛盾しない所見であった。【結語】同疾患を素地とする小児肝細胞癌の報告は国内にない。1歳時に既に肝硬変を認めており、Wilson病以外の要因が影響している可能性も考えられた。予後良好とされるWilson病でも、肝硬変の進展した症例では悪性疾患発生を念頭においた経過観察をするべきかもしれない。
索引用語 Wilson病, 肝細胞癌