抄録 |
近年内視鏡観察、治療においてNarrow Band Imaging(NBI)が導入されるようになった。通常観察では識別困難な境界診断、病変の質的診断に多大な威力を発揮しつつある。今回我々はNBIが境界診断に有効であった症例を経験したので提示する。症例は57歳女性。主訴:定期健診異常。現病歴:2002年12月より近医で内視鏡検査を定期的に受けていた。2006年11月に検査を受けた際、幽門前庭部小弯前壁よりに退色調で中心がやや陥凹した病変を初めて指摘された。生検の結果低分化腺癌と診断され加療目的で紹介となった。経過:NBIで観察すると病変の境界がはっきりし、低分化型ではあるがm癌と診断、本人の希望もあり内視鏡治療を行った。通常通りマーキング、リフティング後フラッシュナイフ、ITナイフを用いESDを施行した。切除標本は深達度m、断端は陰性であった。 NBIは415nm,540nmの特殊光を用いスペクトル幅を狭帯域化することで、粘膜表面の血管や粘膜微細模様、毛細血管が集まる領域の強調表示を行う光学的な画像強調観察である。ユニットは既存のものに追加するだけなのでコスト的な負担は軽く、その観察能がもたらすものは今後発展してくるものと考える。ピットパターンの評価、血管変化の評価、またその表現方法が各学会等で発表されつつある。今回は使用していないが拡大観察下にNBIを用いるものも報告されている。今回はESDの厳密な適応からははずれるが病変大きさが小さいこと、m癌であること、本人の希望を考慮しESDを施行した。今後定期的な観察は十分に行っていく予定である。NBIを使用しESDを行った症例を経験したので報告した。 |