セッション情報 一般演題

タイトル 131:

胃切除術を行い、内視鏡指摘病変以外にも複数の病変を認めたA型胃炎合併多発性カルチノイド腫瘍の一例

演者 辛島 卓(雪の聖母会 聖マリア病院 消化器内科)
共同演者 酒井 輝文(雪の聖母会 聖マリア病院 消化器内科), 井手 耕一(雪の聖母会 聖マリア病院 消化器内科), 吉貝 浩史(雪の聖母会 聖マリア病院 消化器内科), 住江 博明(雪の聖母会 聖マリア病院 消化器内科), 成田 高三郎(雪の聖母会 聖マリア病院 消化器内科), 前山 泰彦(雪の聖母会 聖マリア病院 消化器内科), 岡村 修祐(雪の聖母会 聖マリア病院 消化器内科), 佐田 通夫(久留米大学病院 消化器内科), 谷脇 智(聖マリア病院 外科), 檜垣 浩一(聖マリア病院 病理), 神代 咲子(聖マリア病院 病理)
抄録 【症例】56歳、女性。【既往歴】特記事項なし。【現病歴】2006年9月健診目的に近医で、上部消化管内視鏡検査を行い、胃カルチノイド腫瘍と診断された。10月に当院消化器内科に紹介、上部消化管内視鏡検査をおこなった。胃体上部から胃体下部にかけ数mm大から10mm大の粘膜下腫瘍を計4箇所認めた。生検では核腫大、核クロマチンの軽度増殖した異型細胞の平面的な増生があり、腺房様ないし偽腺管様配列を伴っていた。グリメリウス染色、クロモグラニン免疫染色で部分的に陽性顆粒がみられ、多発性胃カルチノイド腫瘍と診断された。超音波内視鏡検査では、胃体中部に認めた10mm大の潰瘍を伴ったカルチノイド腫瘍は、粘膜下深層から一部筋層内浸潤と判断した。造影CT検査では、胃病変は同定できず、明らかなリンパ節転移や遠隔転移は指摘できなかった。超音波内視鏡所見より、胃切除術による全体像の把握が必要と判断し、2006年11月に胃体部部分切除術を施行した。組織診断では、内視鏡で指摘された4箇所に加え他に4箇所、計8箇所のカルチノイド腫瘍を認めた。一部の病変は粘膜下層深層に進展しており、細胞は核が類円形、均一でorganoid patternや策状、充実性を呈していた。核分裂像は見られなかった。顕微鏡的に認めた病変はいずれも粘膜の隆起や構造変化を伴わず、小型の病変であった。背景には固有腺の萎縮と共に、粘膜筋板付近に多発するendocrine cell micronestがあり、A型萎縮性胃炎に合併したカルチノイドと考えられた。今後慎重な経過観察が必要であるが、腫瘍切除3ヶ月後の血清ガストリン値は術後も高値を呈している。上部内視鏡検査、及びCT検査では明らかな再発病変は指摘されていない。【考察】消化管カルチノイド腫瘍の分類、治療方針はいまだ確立されていないが、内視鏡的粘膜切除術、低侵襲手術を含めた治療方針の再検討が必要と考えられた。
索引用語 胃カルチノイド, A型萎縮性胃炎