共同演者 |
水田 敏彦(佐賀大学 医学部 内科学), 秋山 巧(佐賀大学 医学部 内科学), 岩根 紳治(佐賀大学 医学部 内科学), 江口 有一郎(佐賀大学 医学部 内科学), 安武 努(佐賀大学 医学部 内科学), 尾崎 岩太(佐賀大学 医学部 内科学), 岸川 圭嗣(白石共立病院 外科), 藤本 一眞(佐賀大学 医学部 内科学) |
抄録 |
【症例】70歳男性.2001年に人間ドックで肝左葉に4cmの結節性病変を指摘され,近医で腫瘍生検の結果C-kit(+)でありGISTの診断となった.しかし本人と家族の判断でその後の一切の通院や経過観察を中止,市販漢方薬を内服していた.2006年3月頃より腹部膨満が出現,同年7月より食後に嘔吐を繰り返すようになった為,近医より当院紹介入院となった.58歳時早期胃癌に対して手術歴あり.入院時血液検査:WBC 6000/μl, Hb 11.8g/dl, Plt 14.9万/μl, PT 60.6%, Alb 4.5g/dl, T-Bil 1.0mg/dl, AST 28IU/l, ALT 18IU/l, AFP 5.1ng/ml, L3(-), PIVKA-II 15mAU/ml, CEA 3.4ng/ml, CA19-9 20U/ml, CA125 5U/ml, HCV-Ab(-), HBs-Ag(-), HBc-Ab(-).上部消化管内視鏡検査で壁外性圧迫による著しい胃狭窄を認めたが,明らかな粘膜病変は認めなかった.腹部CTで肝左葉に171mm×137mmの被膜を有する巨大腫瘤があり,内部は不均一で多数の嚢胞と液面形成を認めた.隣接臓器,門脈本幹,下大静脈を強く圧排していたが,小腸および大腸に原発巣は認めなかった.造影エコーでは腫瘤内部に不均一な血流を比較的多く認め,被膜から内部に向かって造影効果の広がりを認めた.腹部血管造影では腫瘍に一致してtumor neovascularityを認め,主なfeederは左胃動脈と肝動脈左葉枝であった.【臨床経過】肝巨大腫瘤によって上部消化管が強度狭窄していたため経口摂取が困難な状況であった. 中心静脈栄養にて全身状態は良好に改善,肝以外に原発巣と思われる病変を認めず,5年前の前医病理所見と当院での検査結果から肝原発GISTと判断し外科的切除を行った.切除標本の病理診断でもGISTと診断された.術後ADLは自立し経過良好である.【考案】5年間放置された肝原発GISTの一例を経験した.通常GISTは胃や小腸原発が多いが,本症例は肝以外に原発病変を認めず,また長期に観察しえた貴重な症例と考えられたので,若干の考察を加え報告する. |