セッション情報 一般演題

タイトル 216:

生前に確定診断が困難であったびまん性肝血管肉腫の1例

演者 有留 玄太郎(産業医科大学 消化器代謝内科)
共同演者 成田 竜一(産業医科大学 消化器代謝内科), 田口 雅史(産業医科大学 消化器代謝内科), 阿部 慎太郎(産業医科大学 消化器代謝内科), 田原 章成(産業医科大学 消化器代謝内科), 大槻 眞(産業医科大学 消化器代謝内科)
抄録 症例は40歳、男性。1975年頃より多発嚢胞腎にて血液透析を受けていた。2006年10月より発熱があり、炎症反応陽性と白血球増加を指摘され、11月に前医に入院となった。造影CTで肝両葉に周囲から造影される低吸収域が複数みられた。入院後39℃台のspike feverが持続していたこともあり、肝膿瘍の疑いで抗生剤投与が行われた。しかし発熱の改善はみられず、肝病変精査のため肝生検が施行された。病理組織学的には線維性間質に富んだ組織像のみであり、膿瘍を疑わせる像や明らかな悪性像も指摘されなかった。その後も確定診断がつけられないまま抗生剤等で加療されていたが、熱型、炎症反応の改善がみられなかったため、12/20当院転院となった。当院に入院後も各種培養や肝生検を含む諸検査を繰り返すも高度の炎症反応の原因を特定できず、凝固系異常や代謝性アシドーシスに伴う意識障害、黄疸が出現した。持続血液濾過透析やFFP投与などの集中治療を施行したが、多臓器不全にて1/2永眠された。剖検所見では、肝は左葉を中心として両葉にわたる出血壊死の著明な腫瘍性病変を認め、肝門部リンパ節に転移を伴っていた。未分化で異型な紡錘形ないし卵円形の腫瘍細胞が渦巻状あるいは束状の配列に認められ、類洞に沿って進展する像や一部に不整な血管形成像を伴っている所見を認めた。免疫組織学では腫瘍細胞は、ビメンチンやサイトケラチンに加えCD31やD2-40といった内皮細胞のマーカーが部分的に陽性であり、低分化な血管肉腫と診断した。今回われわれは、長期間の発熱、炎症反応の上昇を認め、肝膿瘍が疑われたが、2度の肝生検にても確定診断できず、剖検にてはじめて肝血管肉腫と診断した1例を経験した。肝血管肉腫は肝原発性悪性腫瘍の中でもきわめて稀な腫瘍であり、文献的考察を含めて報告する。
索引用語 肝血管肉腫, 不明熱