セッション情報 シンポジウム1

タイトル S1-06:

肝細胞癌に対する生体肝移植:当科の成績

演者 高槻 光寿(長崎大学)
共同演者 江口 晋(長崎大学), 山之内 孝彰(長崎大学), 日高 匡章(長崎大学), 渡海 大隆(長崎大学), 濱崎 幸司(長崎大学), 宮崎 健介(長崎大学), 黒木 保(長崎大学), 田島 義証(長崎大学), 兼松 隆之(長崎大学)
抄録 目的:肝細胞癌(HCC)に対する生体肝移植の当科の方針および成績を報告する。対象および方法:1997年8月より2007年3月まで当科で施行した生体肝移植症例66例中、HCC症例は23例(35%)であった(HBV8例、HCV14例、非B非C1例)。男17例、女6例、年令の中央値57(36-68)で、18例(78%)が術前になんらかの治療を受けていた(切除2例、RFA4例、PEIT7例、TAE11例(重複あり))。腫瘍マーカーの中央値はAFP 30ng/ml(0.8-1011)、PIVKA-II 45mAU/ml(6-5874)であった。術前評価として局所に関しては超音波、造影CT、SPIO-MRIを行い、遠隔転移の有無のチェックは頭部/胸部CTおよび骨シンチで行った。移植の適応に関してはミラノ基準を遵守することを原則とした。術後の免疫抑制療法は他の疾患同様、タクロリムスとステロイドの2剤を基本とし、HCVの症例は術後、再発の治療(Peg-IFN+リバビリン)の開始と同時にタクロリムスをサイクロスポリンに変更した。結果:22例中20例(91%)が術前ミラノ基準を満たしていた。満たしていなかった2例はいずれも多発の症例であり、術前および開腹時に肝外病変のないことを確認の上移植に踏み切った。ミラノ基準を満たし、かつ摘出標本を全割して詳細に検索し得た症例は17例あり、そのHCCの個数、大きさの中央値はそれぞれ2.5個(0-12)、1.9cm(0.4-5)であった。最終的に、組織学上ミラノ基準を逸脱していた症例は5例(29%)であった。また、脈管侵襲のみられた症例は2例であった。全例再発なく経過し、22例中5例を他病死で失った(胆道合併症1例、肝動脈血栓1例、多臓器不全3例)が、17例は良好な肝機能を維持して生存中である(観察期間の中央値23ヶ月(3-44))。結語:HCCに対する当科の生体肝移植の成績は他疾患と遜色なかった。摘出標本でミラノ基準を逸脱した症例も全例無再発であり、現行では術前適応評価基準としてミラノ基準は妥当であると考えられる。
索引用語 肝細胞癌, 生体肝移植