セッション情報 一般演題

タイトル 58:

自然経過にて消失を認めた重症急性膵炎に合併した巨大仮性膵嚢胞の一例

演者 中山 昌之(佐賀大学 医学部 内科)
共同演者 藤瀬 剛弘(佐賀大学 医学部 内科), 小松 未生(佐賀大学 医学部 内科), 萬年 孝太郎(佐賀大学 医学部 内科), 山口 加奈子(佐賀大学 医学部 内科), 大谷 響(佐賀大学 医学部 内科), 下田 良(佐賀大学 医学部 内科), 綱田 誠司(佐賀大学 医学部 光学医療診療部), 坂田 祐之(佐賀大学 医学部 内科), 岩切 龍一(佐賀大学 医学部 光学医療診療部), 藤本 一眞(佐賀大学 医学部 内科)
抄録 【症例】44歳 男性【現病歴】2006年3月中旬の夕食後突然の腹痛を認めたため,当院救急外来を受診.腹部の圧痛,膵酵素の上昇,腹部CTにて膵腫大を認め,急性膵炎の診断にて当科入院となる.元来大酒家であり,症状出現前も酒量は増加していた.【入院時現症】心窩部に著名な圧痛あり.明らかな反跳痛,筋性防御は認めない.腸蠕動音は低下.【入院時検査所見】血液検査にて炎症所見の上昇,膵酵素の上昇,LDH上昇,カルシウムの低下,総蛋白の低下などを認めた.腹部CTにては,膵は全体に腫大し,壊死を示唆する造影効果の不均一,膵周囲および後腹膜腔に液体貯留を認め,grade IVの所見であった.【入院後経過】重症急性膵炎と診断し,絶食・輸液管理を含む全身管理にくわえ,蛋白分解酵素阻害剤,抗生剤の動注療法,持続血液濾過透析をおこなった.経過は順調に改善傾向を認めたが,経過中より膵体尾部に約8cm強の巨大な嚢胞形成を認めた.内視鏡的,あるいは外科的治療の適応と考えたが,患者本人の強い希望により保存的に経過を観察することとし,2006年5月下旬に退院.以後外来にて経過観察を行ったが嚢胞に変化は認めなかった.しかしながら2006年9月腹部CTにて嚢胞の消失を認め,以後発症後1年経過を観察しているが嚢胞の再発などは認めていない.【考察】仮性膵嚢胞の保存的治療は急性膵炎治療の延長線上にあり,約30%は自然消失が期待できるとされている.自然消失は嚢胞形成後6週間以内に得られることが多く,それを過ぎると消失率は著しく低下する.また嚢胞径についても5cm以下は自然消失しやすく,それ以上では低率であるとされている.嚢胞径の大きなものでは,穿通や出血などの合併症のリスクが高まるため,通常は内視鏡的あるいは外科的な積極的な治療が必要となる.本症例においては保存的な経過で自然消失を認めており,比較的稀であるため,若干の文献的考察を加え報告する.
索引用語 仮性膵嚢胞, 急性膵炎