共同演者 |
岩田 郁(福岡大学 医学部 消化器内科), 花野 貴幸(福岡大学 医学部 消化器内科), 平野 玄竜(福岡大学 医学部 消化器内科), 西澤 新也(福岡大学 医学部 消化器内科), 松本 照雄(福岡大学 医学部 消化器内科), 猪俣 慎二郎(福岡大学 医学部 消化器内科), 田中 崇(福岡大学 医学部 消化器内科), 阿南 章(福岡大学 医学部 消化器内科), 横山 昌典(福岡大学 医学部 消化器内科), 入江 真(福岡大学 医学部 消化器内科), 竹山 康章(福岡大学 医学部 消化器内科), 釈迦堂 敏(福岡大学 医学部 消化器内科), 喜多村 祐次(福岡大学 医学部 消化器内科), 早田 哲郎(福岡大学 医学部 消化器内科), 向坂 彰太郎(福岡大学 医学部 消化器内科) |
抄録 |
症例は66才の男性。C型肝硬変として外来通院していたが、2006年6月にインターフェロンβによる治療を開始された。8月7日に刺身を食べ、その3日後に38℃の発熱と、左腓腹筋部の疼痛が出現ために当院を受診した。血液検査ではWBC 5900/μl, Hb 10.5 g/dl, Plt 4.7万/μl, T.bil 2.6 mg/dl, AST 26 IU/l, ALT 25 IU/l, LDH 173 IU/l, ALP 305 IU/l, γ-GTP 32 IU/l, CRP 0.2 mg/dlであった。炎症所見は乏しかったが、発熱と下肢の疼痛から、ビブリオ感染症も疑い、すぐに抗生剤の経口投与を開始し、同時に血液培養検査を行った。血液培養にてビブリオバルニフィカスが検出されたため、抗生剤を注射薬に変更した。その後、下肢の皮膚発赤が出現したが、皮膚の試験切開において炎症は皮下までに限局し、壊死性筋膜炎の所見が見られなかった。このため、下肢の切断は行わず経過観察したが、抗生剤のみの保存的治療で徐々に軽快した。ビブリオバルニフィカス感染症は、糖尿病や肝硬変といった免疫能が低下した患者に合併する予後不良の疾患である。このような患者において、夏季の魚介類の生食は注意を要する。本症例はインターフェロン療法中のため好中球減少をきたしており、これが感染のリスクを高めた可能性がある。しかし抗生剤投与のタイミングが非常に早かったため、保存的治療のみで軽快した。現在は肝硬変症例に対してもインターフェロンが保険適応になっているが、治療中は特にビブリオ感染症に注意し生活指導を行うことと、ビブリオ感染症を起こした場合は、早期の診断・治療が非常に重要であると考えられた。 |