抄録 |
Colitic cancerとは慢性の大腸炎に起因して発症してくる大腸癌を指し潰瘍性大腸炎、Crohn 病、放射線性直腸炎などが原疾患としてあげられる。一般的には、そのなかで最も頻度の高い潰瘍性大腸炎の長期経過例に見られる癌化例をColitic cancerとしている。今回、当院で経験した潰瘍性大腸炎に合併した大腸癌とクローン病に合併した大腸癌の症例2例を報告する。症例1:34歳男性。発症11年経過の左側結腸型潰瘍性大腸炎。再燃緩解を繰り返しながら他院通院中であった。平成11年の大腸内視鏡検査では、直腸に全周性の狭窄がみられたが、生検にて腫瘍細胞は認めなかった。便秘に対して平成15年6月大腸内視鏡検査を施行。下部直腸に隆起性病変を認め精査目的にて当院受診。大腸癌の診断にて、大腸全摘出術、腹会陰式直腸切断術、D2郭清回腸人工肛門造設術を施行した。Rb,0型(Is集簇型)sm,mod-well differentiated adenocarcinoma,ly(0),v(0),aw(-),ow(-),ew(-),n(-),であった。症例2:33歳男性。他院にて21歳頃から痔瘻に対して切開等の治療を受けていた。平成17年3月頃から肛門痛自覚。5月頃より便柱狭細化,腹部膨満感出現したため、近医にて大腸内視鏡検査を施行。直腸の発赤,粘膜の粗造を認め,生検にてsignet ring cell carcinomaと診断、精査加療目的に当院紹介受診となった。下部内視鏡検査にて肛門から約5cmににわたって全周性の狭小化と表面不整粘膜を認めた。下腹部CT、MRIにて前立腺や精巣への浸潤が疑われたため、人工肛門造設後、術前化学放射線療法を施行し、平成17年9月Miles手術施行した。Rb,a1,signet ring cell carchinoma ly(?),v(0),aw(-),ow(-),ew(-),n(+),であった.人工肛門造設後、術前化学放射線療法を施行し、平成17年9月Miles手術施行した。Rb,a1,signet ring cell carchinoma ly(?),v(0),aw(-),ow(-),ew(-),n(+),であった.潰瘍性大腸炎やクローン病の長期経過例に関しては、colitic cancerを念頭におきsurveillance colonoscopyが重要であると考えられた。 |