セッション情報 一般演題

タイトル 185:

非機能性膵内分泌腫瘍にて経過観察中、9年後に低血糖が出現し症候性インスリノーマの診断を得た一症例 

演者 松尾  享(九州大学 病態制御内科)
共同演者 加来 豊馬(九州大学 病態制御内科), 宜保 淳也(九州大学 病態制御内科), 河辺 顕(九州大学 病態制御内科), 大野 隆真(九州大学 病態制御内科), 安田 幹彦(九州大学 病態制御内科), 中村 太一(九州大学 病態制御内科), 有田 好之(九州大学 病態制御内科), 五十嵐 久人(九州大学 病態制御内科), 伊藤 鉄英(九州大学 病態制御内科), 壬生 隆一(九州大学 臨床・腫瘍外科), 田中 雅夫(九州大学 臨床・腫瘍外科), 高柳 涼一(九州大学 病態制御内科)
抄録 症例は75歳の男性。1995年に結腸癌の診断にて左半結腸切除術を当院外科にて施行され、その後は外来で経過観察されていた。1997年より腹部CTにて膵尾部に径2cm大の石灰化を伴った腫瘍を指摘されていたが、無症候であり非機能性膵内分泌腫瘍として経過観察されていた。その後も画像検査で膵尾部腫瘍の径、性状に経時的変化を認めなかった。2006年5月の血液検査にて初めて血糖の低値を指摘されたが、症状もなく経過観察となった。しかし、同年7月に嘔吐に引き続き意識障害をきたしたため近医に搬送となった。その際、血糖値32mg/dlと著明な低血糖を認め、ブドウ糖投与にて意識は改善したが、その後も夜間に低血糖発作を繰り返すため、インスリノーマ疑いにて当科紹介入院となった。絶食試験にて、絶食開始11時間後に低血糖が誘発されたが、血中ケトン体および遊離脂肪酸の上昇は認めなかった。またその際施行したグルカゴン負荷試験で血糖値の上昇を認めた。血管造影では膵尾部に径2cm大のhypervascularな腫瘍を認めた。局在診断のため、選択的動脈内カルシウム負荷テスト(ASVS)を施行し、脾動脈からのカルシウム刺激により有意なインスリンの上昇を認めたため、膵尾部に限局するインスリノーマと診断し、当院外科にて膵腫瘍核出術を施行した。なお、術前にMEN-I型の精査を施行したが、MEN-Iの合併は否定的であった。術後低血糖発作の出現はなく、腫瘍の再発も現在まで認めていない。今回、無症候で経過の画像検査上、腫瘍径、性状などに変化は認めなかったが、9年後に低血糖発作を契機に症候性膵インスリノーマの診断にて手術し得た興味ある一症例を経験したので、若干の文献的考察を加え報告する。 
索引用語 インスリノーマ, 非機能性膵内分泌腫瘍