抄録 |
症例は63歳, 女性. C型肝硬変の診断で近医にて経過をみられていた. 肝癌の合併はなかった. 胃穹窿部静脈瘤についても近医で経過観察されていたが,形態が増大してきたため,治療目的で当科紹介となる. 血行動態を把握するために3D-CTを施行したところ腎静脈系短絡路(SRS)は存在せず, 主排血路は左下横隔静脈(LIPV)であり, LIPVは右房直下の下大静脈に流出していた. このためLIPVからのB-RTOを施行した. 右内頚静脈よりアプローチし8Frエスワンシースを留置したのちガイドワイヤー下に6Frバルーン付肝静脈カテーテルをLIPVに挿入した. LIPVのバルーン閉塞下逆行性造影では静脈瘤は描出されず横隔膜や肋間の静脈が複数描出された. このため静脈瘤側に選択的挿入することにより静脈瘤が描出された. ここで5%EOIを注入開始したところ 5%EOIは計25ml使用したが,供血路の描出はみられず1日目の治療を終了した. カテーテルは24時間留置し翌日再造影したところ1日目に描出されなかった供血路(短胃静脈)も描出された. このため5%EOIを10ml追加投与し,静脈瘤内の血栓化は良好であったためカテーテルを1時間留置し治療終了とした. これまでに治療した胃穹窿部静脈瘤のうち主排血路がLIPVと同定できた症例を3例経験し,いずれもシアノアクリレート併用のEISを行っている.我々の検討ではB-RTOに比べEISは再発が多く,可能な限りB-RTOを行うことが望ましいと考える. 当症例のように3D-CTなどで排血路が同定され,かつカテーテル挿入が可能な場合にはB-RTOを考慮すべきと考える. |