セッション情報 ワークショップ2

タイトル W2-10:

内視鏡的十二指腸乳頭切除術の検討

演者 植木 敏晴(福岡大学筑紫病院 消化器科)
共同演者 大谷 圭介(福岡大学筑紫病院 消化器科), 藤村 成仁(福岡大学筑紫病院 消化器科), 清水 愛子(福岡大学筑紫病院 消化器科), 大塚 雄一郎(福岡大学筑紫病院 消化器科), 松井 敏幸(福岡大学筑紫病院 消化器科)
抄録 【目的】当科では2001年以降十二指腸乳頭部病変例に対して内視鏡的乳頭切除術(EP)を施行してきた.そこでEPについて検討した.【対象と方法】2006年までに当科で施行したEP9例を対象とした.平均年齢は56歳であった.内訳は,十二指腸乳頭部腫瘍7例(腺腫6例,粘膜内癌1例),乳頭部腫瘍疑い1例,乳頭部狭窄1例であった.EPの手技は,高周波発生装置で,スネアを用いエンドカットモードで一括切除した.膵管ステントを容易に留置するために術前にインジコカルミンを混入した造影剤で膵管を造影した.検討項目は,1.ERCP,EUS,IDUS所見,2.EPの一括切除率,3.術前診断と最終病理診断の比較,4.合併症とその対策,5.臨床経過である.なお全例術前から蛋白分解酵素阻害剤と抗生剤の点滴静注を行なった.【成績】1.ERCP,EUS,IDUSでは,全例で膵管や胆管への浸潤はなかった.EUSやIDUSでは,全例で腫瘍の内部エコーは均一で,腫瘍は乳頭部に限局していた.2.EPの一括切除率は9例中8例(89%)で,分割切除となった1例は粘膜内癌であった.3.最終病理診断は,術前の生検で乳頭部腫瘍が疑われた1例が乳頭炎で,乳頭部狭窄の1例に腫瘍性病変はなかった.術前に乳頭部腫瘍(腺腫,早期癌)と診断した7例は全て最終病理診断と一致していた.垂直断端は7例中5例が陰性で.残りの2例(腺腫)が一部で陽性で,水平断端は7例中4例が陰性で,残りの3例(腺腫)が一部で陽性であったが,その後の生検では全て陰性であった.4.全例でEP時の出血はなかった.1例で術後7日目にoozingを認めたが,トロンビン散布にて止血できた.膵炎は6例(67%)に認めたが,全て軽症で,平均4.3日後に改善した.膵管ステント留置例は5例(56%)で,膵炎例は6例中3例であった.副乳頭非開存例の1例は膵管ステント留置にも関わらず膵炎を発症していた.胆管炎は2例に認めた.2例とも軽症で胆管ステントを留置されていなかったが,抗生剤の投与で改善した.胆管ステントは2例のみに留置されていた.5.平均観察期間は11ヶ月(5-17ヶ月)であった.乳頭部腫瘍7例全例に再発はなかった.乳頭部狭窄例で繰り返していた膵炎はEP後消失した.【結論】1.EPは,低侵襲治療法や確定診断法として有用であった.2.今後術後の膵炎対策が重要である.
索引用語 十二指腸乳頭部腫瘍, 内視鏡的十二指腸乳頭切除術