セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

肝臓-症例報告4

タイトル 消P-749:

急速な増大を呈した肝原発神経内分泌癌の一例

演者 小野 雄司(札幌社会保険総合病院・内科・消化器科)
共同演者 高橋 秀史(札幌社会保険総合病院・病理診断科), 加藤 総介(札幌社会保険総合病院・内科・消化器科), 高木 智史(札幌社会保険総合病院・内科・消化器科), 吉田 純一(札幌社会保険総合病院・内科・消化器科)
抄録 今回我々は短期間で急速に増大した肝原発神経内分泌癌の一例を経験したので報告する。
 症例は68歳、男性。肺気腫の治療を近医で行っていた。以前より胸部CT検査にて肺に肉芽腫様変化を指摘されており、PET検査を行ったところ、肺には所見なかったが、肝にFDGの集積を認めた。当院に紹介され、造影CT検査を行ったところ、肝S4/5に造影早期で周辺部に軽度の造影効果、造影晩期で全体が不均一に増強を示す33mmの結節影を認めた。また、肝十二指腸間膜リンパ節の腫大を認めた。その10日後の造影MRI検査では47mmと増大し、門脈腫瘍塞栓およびリンパ節転移の所見を認め、急速に増大していると考えた。組織学的検索のため肝腫瘍生検を行ったところ、神経内分泌癌の所見であった。
 治療として化学療法を選択し、肺小細胞癌に準じてCDDP+CPT-11を行ったが、1コース終了後に腎機能障害が出現し、その後CBDBA+CPT-11に変更した。治療経過中も急速に肝癌は増大し、2コース終了時点で腫瘍径は12cmとなっていた。3コース投与直前に間質性肺炎の発症を認め、化学療法を中断した。対症療法を行ったが肝不全を呈し、初診より5ヵ月後に永眠された。 剖検所見では、肝は3270gと著明に腫大しており、そのほとんどは腫瘍で占められていた。組織学検索では神経内分泌癌の所見であった。他臓器に原発を示唆する所見はなく、肝原発であると診断した。死因は腫瘍の進展による肝不全と考えらた。
 肝原発神経内分泌癌は稀であり、急速に増大し予後は不良とされ、1年生存率が23.5%とする報告もある。治療としては第一に切除であるが、診断時には手術不能であることも多い。しかし標準的な化学療法はまだ存在せず、今後の症例の蓄積が待たれる。また、有効と推測される化学療法は肝細胞癌や胆管細胞癌のそれとは異なるため、画像所見がそれらとしては非典型的な場合、肝腫瘍生検を行うべきとする報告もあり、本症例でも化学療法の選択に肝腫瘍生検が有効であった。
索引用語 神経内分泌癌, 剖検