セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

肝臓-症例報告4

タイトル 消P-750:

肝細胞癌に対するソラフェニブ投与中に有棘細胞癌を合併した一例

演者 大濱 日出子(市立池田病院・消化器内科)
共同演者 井倉 技(市立池田病院・消化器内科), 今井 康陽(市立池田病院・消化器内科), 小来田 幸世(市立池田病院・消化器内科), 澤井 良之(市立池田病院・消化器内科), 福田 和人(市立池田病院・消化器内科), 土本 雄亮(市立池田病院・消化器内科), 牧野 祐紀(市立池田病院・消化器内科), 卜部 彩子(市立池田病院・消化器内科), 大西 孝典(市立池田病院・消化器内科), 倉橋 知英(市立池田病院・消化器内科), 宇都宮 大輔(市立池田病院・消化器内科), 水本 塁(市立池田病院・消化器内科), 松本 康史(市立池田病院・消化器内科), 中原 征則(市立池田病院・消化器内科), 厨子 慎一郎(市立池田病院・消化器内科), 角村 由紀子(市立池田病院・皮膚科), 大畑 千佳(市立池田病院・皮膚科), 竹内 真(市立池田病院・病理診断科), 黒川 正典(市立池田病院・消化器内科)
抄録 【背景】本邦でも2009年5月より進行肝細胞癌に対してソラフェニブが導入された。本剤による有害事象は欧米とは異なり手足皮膚反応や肝障害の頻度が高く投与中止の原因にもなっている。その一方で欧米では、最近本剤によるkeratoacanthosisや皮膚扁平上皮癌の合併が6~7%に報告されているが、本邦では2011年3月現在約1万例にソラフェニブが使用されているにも関わらず未だ一例の報告もない。今回我々は肝細胞癌に対しソラフェニブ導入半年後に有棘細胞癌を合併した一例を経験したので報告する。【症例】症例は89歳、男性でB型肝硬変。2001年肝細胞癌に対して肝左葉切除を施行、2009年5月の造影CTにて肝内に多数の再発病変と左横隔膜直下に約28mm大の播種、右肺と左副腎に転移を認め、2010年2月5日からソラフェニブ導入目的にて当院入院となった。ネクサバール200mg/日より開始、2週間後より400mg/日へ増量した。高血圧以外副作用は認めず手足皮膚反応も認めなかった。同年7月頃より左中指に角質硬化を認めたが生検の結果hyperkeratosisであり経過観察していた。10月頃より右肘窩にφ8mm大の角質肥厚を伴う皮膚腫瘤を認め生検の結果扁平上皮癌と診断された。また、全身検索のための頭部MRIにてHCCの脳転移を指摘されたため脳出血発現のリスクを考え現在ソラフェニブの投与を中止している。【考察】ソラフェニブ投与によるkeratoacanthosisや皮膚扁平上皮癌の合併には、本剤のPDGFRのシグナル伝達抑制を介したTGFの発現低下による細胞増殖作用と免疫抑制作用の関与が示唆されている。切除することでソラフェニブの継続投与が可能であることが多いが、本剤の効果や有害事象の人種差を論じる上で貴重な症例と思われるため文献的考察を加えて報告する。
索引用語 ソラフェニブ, 有棘細胞癌