セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

肝臓-症例報告4

タイトル 消P-751:

リンの補給によりソラフェニブ投与継続可能であった3症例

演者 落合 理乃(松山赤十字病院・肝胆膵センター)
共同演者 佐々木 由子(松山赤十字病院・肝胆膵センター), 忽那 茂(松山赤十字病院・肝胆膵センター), 大久保 智恵(松山赤十字病院・肝胆膵センター), 武智 俊治(松山赤十字病院・肝胆膵センター), 大野 芳敬(松山赤十字病院・肝胆膵センター), 横田 智之(松山赤十字病院・肝胆膵センター), 上甲 康二(松山赤十字病院・肝胆膵センター)
抄録 【症例】切除不能な進行肝細胞癌3症例に対し、ソラフェニブ(800mg/日)投与開始した。開始後1-2ヶ月頃より全身倦怠感や食欲不振、不随意運動、筋力低下等の症状が現れ、血液検査にて血中リン濃度の低下を認めた。【経過】副作用のため内服継続困難となり、一時休薬が必要であった。低リン血症に対しリン製剤の内服を開始したところ症状は速やかに改善し、血中リン濃度の上昇を確認した。3症例とも比較的短期間の休薬のみで投与再開する事ができ、ソラフェニブ(400mg/日)投与継続中である。【考察】本3症例を受けて、当院でソラフェニブ投与した全症例の投与前後における血中リン濃度の推移を調べたところ、約50%で同様に低リン血症を認めた。海外ではソラフェニブ投与中に約40%の症例で低リン血症を来たしたという報告がある。軽度から中等度の低リン血症であれば直ちに臨床的に問題とはならないが、長期持続する場合や高度の低リン血症では食欲不振や筋力低下、血球減少、不穏や痙攣などの中枢神経症状など多くの症状を呈し、重篤な場合には死に至ることもある。低リン血症をきたす機序は未だ不明な点が多いが、ソラフェニブ投与中に血中、尿中のカルシウム、リン濃度の低下と、それに伴い活性化ビタミンD、FGF23、CTXの低下、PTHの上昇を認めたという報告があり、ソラフェニブは破骨細胞の働きを阻害する作用があると考えられる。本邦で報告された副作用のうち、全身倦怠感や筋力低下等を認めた症例の中には低リン血症を呈していたものが多く存在すると考えられる。【結語】ソラフェニブ投与に際しては血中リン濃度に注意する必要があると思われる。従来、副作用のため投与中止を余儀なくされた症例のうち、リン製剤やビタミンDなどの投与により投与継続が可能となる症例が少なからず存在する可能性が示唆された。
索引用語 肝細胞癌, ソラフェニブ