セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

肝臓-症例報告6

タイトル 消P-761:

肝臓に腫瘤を形成し、切除にて診断に至った肝放線菌症の1例

演者 松島 知広(国保旭中央病院・消化器内科)
共同演者 石垣 和祥(国保旭中央病院・消化器内科), 片桐 智子(国保旭中央病院・消化器内科), 坂口 賀基(国保旭中央病院・消化器内科), 高橋 悠(国保旭中央病院・消化器内科), 宮川 明祐(国保旭中央病院・消化器内科), 関根 匡成(国保旭中央病院・消化器内科), 柳本 蔵人(国保旭中央病院・消化器内科), 田村 寿英(国保旭中央病院・消化器内科), 山本 隆一(国保旭中央病院・消化器内科), 中村 朗(国保旭中央病院・消化器内科), 糸林 詠(国保旭中央病院・消化器内科), 紫村 治久(国保旭中央病院・消化器内科), 志村 謙次(国保旭中央病院・消化器内科)
抄録 【症例】著患のない48歳男性。H22年6月右奥歯の化膿あるも自然軽快した。同年7月右季肋部痛を主訴に近医受診、肝S6に腫瘤を指摘され、肝膿瘍疑いとなりH22年8/27当科紹介。身体所見では右季肋部痛を認めるほか特記すべきものなく、血液検査所見ではCRP 2.33mg/dlと軽度の炎症反応上昇を認め、HCV抗体、HBs抗原はともに陰性であった。腹部超音波検査では肝S6に肝表面より突出し内部に正常脈管走行を認める径45mm大の低エコー腫瘤あり。腹部造影CTではS6に70mm、S8に10mmの低吸収腫瘤を認め、S6腫瘤は後腹膜への浸潤が疑われた。プリモビストMRIでは肝細胞相にて腫瘤に取り込みを認めた。またS6腫瘤内部には蜂巣様の構造が描出された。DSAでは腫瘤内部に明らかな異常血管を認めず、PETではS6にSUV max16、S8にSUV max2.8の集積を認めた。以上画像検査の結果、炎症性腫瘤疑いの診断となったが悪性も否定できず、診断的治療目的にH22年10/29肝S5/6部分切除を施行した。病理所見にて腫瘤部に放線菌塊を認め肝放線菌症と診断した。なお術中迅速病理にてS6腫瘤切除検体に悪性所見なくS8腫瘤は切除せず。術後は1ヶ月アンピシリン・スルバクタム 6g/日点滴静注投与の後、アモキシシリン・クラブラン酸 750mg/375mg内服とし計6ヶ月間抗生剤投与の方針とした。手術より約5ヶ月経過した現在、CT上新規病巣の出現、残存病変の増悪は認めていない。【考察】肝放線菌症はActinomyces israelliをはじめとする放線菌属によって引き起こされる比較的稀な慢性肉芽腫性疾患であり、診断が困難な疾患とされる。本症例では画像検査にて周囲臓器への浸潤所見、腫瘤内部の蜂巣様構造を認め、これらは文献的にも肝放線菌症の特徴とする報告がある。このような所見を認める肝腫瘤では肝放線菌症も考慮すべきと考えられた。
索引用語 肝放線菌症, 肝腫瘍