セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

肝臓-症例報告6

タイトル 消P-762:

肝生検で診断し得た肝放線菌症の一例

演者 赤穂 宗一郎(大阪赤十字病院・消化器科)
共同演者 木村 達(大阪赤十字病院・消化器科), 大崎 往夫(大阪赤十字病院・消化器科), 若狭 朋子(大阪赤十字病院・病理部)
抄録 【症例】80歳台男性【主訴】咳嗽 肝腫瘤精査【既往歴】慢性腎不全にて血液透析,冠動脈ステント留置術,大動脈弁置換術施行.【現病歴】2011年2月上旬より咳嗽が出現し前医で感冒として加療を受けた.症状が遷延したため精査を行うと,偶発的に造影CTで肝S8に動脈相で淡く染まり静脈相で背景肝と同程度に染まる直径約5cmの腫瘤を認め当院紹介となった.【経過】当院入院時,咳嗽と38度台の発熱を認めたがPSは良好であった.血液検査所見:CRP 7.4mg/dl,T-Bil 0.4mg/dl,AST 26IU/l,ALT 13IU/l,白血球 7870/μl, HBs抗原 陰性,HBs抗体 陰性,HCV抗体 陰性,AFP 2.5ng/ml,PIVKA-2 2510mAU/ml(ワルファリンカリウム内服),CEA 7.9ng/ml,CA19-9 2.0U/ml.腹部超音波:B-modeではhaloを有さない境界不明瞭な類円形の低エコー腫瘤として認め,内部に点状のhigh echoが散在した.Sonazoid造影超音波:vascular phaseでは腫瘤全体が境界明瞭で均一に淡く染まり,Kupffer相ではdefectを呈した.血管造影検査:CTHAで胞巣状に濃染し,CTAPではdefectを呈し腫瘤の一部は横隔膜を穿破し胸腔へと進展していた.また,腫瘤周囲には広範にA-P shuntを疑うareaが広がっていた.典型的な肝細胞癌とは異なる浸潤傾向の強い腫瘍と考え肝生検を行った.しかし,肝組織に悪性所見はなく肉芽形成と好中球の集簇を認めた他,繊細な菌糸を持つ放線菌の菌塊を認めたため肝腫瘤は肝放線菌症と診断した.同日よりペニシリン系抗生剤による治療を開始した.咳嗽は治療開始1週間後には消失し腹部造影CTでも腫瘤は著明に縮小し胸腔内に進展した部位はほぼ消失していたため咳嗽は腫瘤の胸腔への穿破による症状と考えられた.その後も外来にて抗生剤の内服加療を継続した.【考察】肝放線菌症は画像での鑑別が困難であり組織培養や生検での検出率も低いため,診断に難渋し手術を施行される例が少なくない.肝生検で診断し得た肝放線菌症を経験したので画像的特徴を中心に若干の文献的考察を加え報告する.
索引用語 肝放線菌症, 肝生検