セッション情報 パネルディスカッション6(消化吸収学会・消化器病学会・消化器内視鏡学会・消化器外科学会合同)

消化吸収の側面からみた炎症性腸疾患の病態と栄養療法

タイトル 吸PD6-9追:

栄養状態がinfliximabの治療効果に及ぼす影響

演者 須見 遼子(大阪大大学院・生体機能補完医学)
共同演者 中島 清一(大阪大大学院・消化器外科学), 伊藤 壽記(大阪大大学院・生体機能補完医学)
抄録 【目的】クローン病(CD)は原因不明の難治性炎症性腸管障害で、慢性の経過をたどり栄養障害を伴う例も少なくない。近年は抗TNF-αキメラモノクローナル抗体(infliximab以下IFX)を用いた薬物治療が積極的に行われるようになったが、全例に奏効するわけではなく、non-responderが20~30%存在する。我々は栄養障害を伴うCDには創傷治癒遅延が存在し、IFXの治療効果に悪影響を及ぼしている可能性があると考え、IFX投与前の栄養状態がIFX治療に及ぼす影響を検討することを目的に以下の研究を行った。
【方法】当施設において、IFX初回導入のCD患者16例に対し、IFXの0週1投目、2週2投目、6週3投目に栄養アセスメントとCDの活動性を評価し、両者の相関を検討した。栄養状態はBMI(Body Mass Index)とNRI(Nutritional Risk Index)を、CDの活動性はCDAI(Crohn's Disease Activity Index)を用いて評価した。
【成績】IFX導入時に栄養状態が「適正~肥満(BMI≧18.5)」と判断された症例は8例(50.0%)で、これら全例にCDAIの改善を認めIFXが奏功したと判断された。一方、「低栄養状態(BMI<18.5)」と評価された患者は8例(50.0%)で、うち2例にIFXが奏効したものの、残る6例では効果を認めず、「適正~肥満」群に比してIFXの有効性は有意に低かった(p=0.002)。また、NRIが97.5以上の「栄養障害リスクなし」とされる5例(31.3%)は全例でIFXが奏効し、有効性が高かった(p=0.037)。BMIとNRIが共に基準値を下回る症例7例のうち6例が無効例であり、その他の群と比較して有意に有効性が低かった(p=0.001)。
【結論】IFXを導入予定のCD患者においては、治療前に栄養状態を適切に評価し、必要に応じて栄養介入を行うことによって、奏効率を上げることができる可能性が示唆された。
索引用語 クローン病, 栄養