セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

肝臓-症例報告6

タイトル 消P-765:

肝蛭症の1例

演者 岡田 光生(近森病院・消化器内科)
共同演者 榮枝 弘司(近森病院・消化器内科), 青野 礼(近森病院・消化器内科), 高松 正宏(近森病院・消化器内科), 吉本 香里(近森病院・消化器内科), 市川 博源(近森病院・消化器内科), 近森 正康(近森病院・消化器内科), 沖 裕昌(近森病院・消化器内科), 齋藤 純子(近森病院・消化器内科), 北岡 真由子(近森病院・消化器内科), 鈴木 美香(近森病院・消化器内科)
抄録 【症例】56歳女性。【現病歴】欧州に渡航し、その際に肉、魚介の生食はしていないが、生野菜を摂食した。帰国後1週間ほど腹痛、下痢が続くが自然軽快した。帰国後1カ月ごろより発熱、右季肋部痛が出現し来院。【検査所見】血液検査にて著明な好酸球増多と肝胆道系酵素の上昇がみられた。USにてlow echoic、CTにてlow densityの不定形、不均一な腫瘤影を認め、肝生検では好酸球浸潤を伴う炎症と壊死巣を認めた。腫瘍マーカー(AFP、PIVKA-2、CEA、CA19-9)、IgE、抗核抗体は正常範囲内、便虫卵検査は陰性。血清寄生虫抗体スクリーニングにて肝吸虫と肝蛭で陽性(2+)。宮崎医科大学寄生虫学教室へ依頼し血清抗体検査(ELISA法)にて肝蛭は陽性、肝吸虫は陰性であり、肝蛭症の診断に至る。トリクラベンダゾールを投与し症状、好酸球増多、肝障害は消失し、肝腫瘤影も消退傾向である。【考察】肝蛭症はウシやヒツジの胆管内に寄生する大型の吸虫で、ヒトにも寄生する人獣共通寄生虫である。水草や牧草に付着している幼虫(メタセルカリア)を経口摂取することで感染する。欧米やアフリカでは患者発生数が多いが、日本では牛飼育農家や周辺住民などで患者が発生しているが頻度は少なく、臨床医が遭遇する機会は少ない。上腹部~季肋部痛、発熱を主訴として受診することが多く、胆道感染症が疑われるが、著明な好酸球増多に気づけば本症を疑うことができる。胆管細胞癌に紛らわしい画像所見を認めることが多い。診断は虫卵が検出されることは少なく、免疫血清検査と画像所見にて行われることが多い。【結語】好酸球増多を伴う肝腫瘤影を認めた場合は肝蛭症を鑑別する必要があり、その診断においては血清抗体の検索が重要である。
索引用語 肝蛭症, 肝腫瘤影