セッション情報 シンポジウム1(肝臓学会・消化器病学会合同)

分子標的治療の限界を超える新しい肝癌治療法の開発

タイトル 肝S1-9:

進行肝細胞癌に対するソラフェニブ療法中止後の後治療に関する検討

演者 寺島 健志(金沢大附属病院・消化器内科)
共同演者 山下 竜也(金沢大附属病院・消化器内科), 金子 周一(金沢大附属病院・消化器内科)
抄録 【背景】進行肝細胞癌に対するソラフェニブ単独療法の成績は満足できるものではない.今回,ソラフェニブ療法中止後の後治療の有用性につき検討したので報告する.【方法】2006年10月から2011年12月までに当科でソラフェニブ療法を行った進行肝細胞癌54例を対象とし,後治療の内容や治療成績を検討した.【結果】ソラフェニブ療法開始時の年齢中央値は68歳であり,性別は男性が48例であった.ソラフェニブ療法の治療成功期間は1.9ヵ月であり,解析時点で6例が治療継続中,48例が治療を中止となった.48例の中止理由は28例が腫瘍進展,20例が副作用であった.中止となった48例中28例(58%)で後治療が行われ,内容は,肝動注化学療法が15例,全身化学療法10例,骨転移や腫瘍栓に対する放射線療法が9例,TACE 6例,ラジオ波焼灼療法3例,新規抗がん剤や免疫療法の臨床試験11例であった(重複あり).後治療の有無はソラフェニブ療法終了時のChild-Pugh分類と密に相関していた(p<0.001).後治療なし群のソラフェニブ療法終了からの生存期間中央値はそれぞれ2.5ヵ月であったのに対して,後治療あり群では11.8ヵ月と有意に予後が良好であった(p<0.001).治療終了後の生存に寄与する因子を検討したところ,治療終了時Child-Pugh分類Aとともに後治療を施行することが有意な因子として挙げられた.後治療としての肝動注化学療法は平均2.5クール施行され,奏効率は33%,治療成功期間中央値が4.8ヵ月であり,肝動注化学療法開始からの生存期間中央値は7.3ヵ月であった.主な副作用は血液毒性であり,カテーテル関連合併症としてポート閉塞や血管炎などを認めたが管理可能であった.【考察】ソラフェニブ療法終了後,治療を行った症例は行わなかった症例に比べて予後が延長していた.後治療の施行にはソラフェニブ療法終了時の肝予備能が重要であり,ソラフェニブ療法中も肝予備能を維持し,終了時には可能な症例で積極的に集学的治療を考慮すべきと考えられた.
索引用語 ソラフェニブ, 後治療