セッション情報 パネルディスカッション6(消化吸収学会・消化器病学会・消化器内視鏡学会・消化器外科学会合同)

消化吸収の側面からみた炎症性腸疾患の病態と栄養療法

タイトル 吸PD6-10:

クローン病におけるアダリムマブによる粘膜治癒効果と栄養状態の検討

演者 大森 鉄平(東京女子医大・消化器病センター消化器内科)
共同演者 飯塚 文瑛(東京女子医大・消化器病センター消化器内科), 白鳥 敬子(東京女子医大・消化器病センター消化器内科)
抄録 【目的】クローン病(CD)において、抗TNFα抗体の有効性はすでに認識されている。今回、我々は当院においてアダリムマブ(ADA)を投与したクローン病患者の粘膜治癒効果と栄養状態の検討を行った。【方法】2007年~2011年の間に、当院にてADAを投与した活動期、又は外瘻を有するCD患者18例のうち、経過を追えている15例を対象とした。ADA投与前後の内視鏡像、体重、栄養状態、併用治療などを比較検討した。症例の内訳は男性7例、女性8例で、年齢は15歳~59歳(平均39.4歳)、病型は小腸型1例、小腸大腸型12例、大腸型2例であり、罹病期間は2ヶ月~39年(平均13.2年)、投与理由は活動期4例、外瘻3例、インフリキシマブ(IFX)からの切り替え8例であった。併用治療は、5-ASA13例、PSL7例、AZA5例、ED9例であり、CDに関連した腹部手術既往のある症例は10例、IFX投与経験のある症例は11例であった。ADAは2週毎に投与し、初回160mg、2回目80mg、3回目以降は40mgを皮下注射した。有効性の評価は投与8週後に行った。【成績】投与後の内視鏡像は、治癒粘膜2例、不変5例、未施行8例であった。投与後の体重増加は平均2.07kgであり、投与前後の平均値変化はCDAI173.2→133.1(-40.1)、TP6.57→6.84(+0.27)、Alb3.79→3.97(+0.18)、CRP1.22→0.42(-0.8)、Hb12.19→12.57(+0.38)であり、疾患活動性の低下及び栄養状態の改善を認めた。経過良好例は9例、無効例は6例で、無効例のうち3例がPSL・AZA増量、1例がIFXへ切り替え、2例がADA治療継続にて経過観察中である。治癒粘膜が得られた2例は、共に発症8ヶ月以内にADA投与されており、手術既往やIFX投与経験がなく、ED併用しており、粘膜治癒に伴う体重増加や栄養状態改善が著明であった。【結論】ADAによる粘膜治癒効果に伴い、疾患活動性の低下だけではなく栄養状態改善効果も期待できると思われた。今後長期的にみたADAの有効性や粘膜治癒なども検討していく必要がある。
索引用語 クローン病, アダリムマブ