セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

その他4

タイトル 消P-782:

門脈ガス血症10例の検討

演者 塩塚 かおり(国立仙台医療センター・消化器科)
共同演者 高橋 広喜(国立仙台医療センター・消化器科), 岩渕 正広(国立仙台医療センター・消化器科), 真野 浩(国立仙台医療センター・消化器科), 鵜飼 克明(国立仙台医療センター・消化器科), 田所 慶一(国立仙台医療センター・消化器科)
抄録 【背景・目的】門脈ガス血症(portal venous gas:以下PVG)の多くは腸管の虚血を伴う急性腹症の際にみられる所見であり、従来は予後不良の疾患とされていた。しかし近年、臨床所見や画像診断にて腸管壊死を伴わない場合は、保存的に治療できる例もしばしば散見される。今回我々は当院において経験したPVGの10例について検討した。【結果】平成18年4月~平成23年4月の間にPVGと診断された症例は10名(男6名、女4名)、平均年齢は74.9歳(58-86歳)であった。基礎疾患に高血圧5例、高脂血症1例、慢性心不全2例(心房細動、僧帽弁逆流症)、慢性腎不全2例、悪性腫瘍3例、基礎疾患なしが1例であった。症状は腹痛、発熱が主であり、1名に下痢、3名はショック症状を伴っていた。診断は全例造影CTで行われた。PVGの原因疾患としては小腸壊死3例、癒着性イレウス1例、腸管穿孔2例、原因不明3例であり、合併症として腸管気腫症3例、急性腎不全6例で、3例は敗血症を呈した。治療経過、予後としては3例が保存的治療、4例開腹手術にて救命できたが、3例が全身状態不良のため手術施行できず翌日死亡した。【考察】PVGは、腸管壊死を示唆する所見のひとつとされ、死亡率約50%と極めて予後不良の病態を表す所見としてとらえられていたが、近年では、画像診断能力の向上に伴い腸管壊死を伴わない多岐にわたる疾患においても発症することが知られており、その存在自体が必ずしも重篤な病態を意味するものではないとされる。しかし腸管虚血を伴う症例においては急激な経過をたどるものも存在することから、PVGの診断時は手術を念頭においた早急な治療法が選択されるべきと考える。【結語】PGVは、腸管壊死が否定できれば保存的に治療も可能な病態である一方、腸管壊死を伴う例も散見されることから、PGVを確認した際にはその臨床所見、検査成績など総合的に判断し、腸管壊死を疑う例に対しては速やかな外科治療を行う必要があると考えた。
索引用語 門脈ガス血症(門脈気腫症), 腸管虚血