セッション情報 パネルディスカッション6(消化吸収学会・消化器病学会・消化器内視鏡学会・消化器外科学会合同)

消化吸収の側面からみた炎症性腸疾患の病態と栄養療法

タイトル 消PD6-15追:

成分栄養療法による抗TNF-α抗体療法効果減弱の抑制についての検討

演者 桂田 武彦(北海道大大学院・消化器内科学)
共同演者 平山 剛(北海道大大学院・消化器内科学), 坂本 直哉(北海道大大学院・消化器内科学)
抄録 【目的】2002年にクローン病治療薬としてインフリキシマブ(IFX)が発売されクローン病治療は大きく変化した。2007年には維持投与も承認され、治療目標が臨床的寛解・維持から粘膜治癒という概念に変化してきた。その一方で、IFXの二次無効症例も2割近い症例で経験され、抗TNF-α抗体に対して上乗せ効果のある治療法が模索されている。今回成分栄養療法(ED)併用の効果について検討した。【方法】初診時から抗TNF-α抗体療法とEDを併用した症例は限られるため、術後リセット後の経過を見る意味で、2007年4月から2012年3月までの期間に手術を受けた当科通院中クローン病患者のうち抗TNF-α抗体療法を継続している症例を拾い上げ、ED施行の有無により臨床経過に差が無いかを後方視的に調査した。【結果】観察期間中に手術を受け当科で経過を追えた症例は16例であった。そのうち14例がIFXあるいはアダリムマブ(ADA)による抗TNF-α抗体療法を継続していた。14例のうちEDを併用している症例は9例(ED群)、併用していない症例(非ED群)が5例であった。ED群での平均ED使用量は2.9パックだった。抗TNF-α抗体療法の効果減弱(IFXでは投与間隔の短縮および増量の有無、ADAでは投与間隔の短縮の有無)について検討したところ、ED群では89%の症例で投与間隔が維持されていたのに対し、非ED群では投与間隔が維持されている症例は40%と低い傾向を示した(P=0.06)。CDAIはED群で平均86.9、非ED群で平均66.1であり差はなかった。【結論】抗TNF-α抗体療法にEDを併用することで二次無効を抑制できる可能性が示唆された。この検討は後方視的な解析で症例数も少ないため、今後大規模な前向き試験での検討が必要である。しかしながら、EDはコンプライアンスの悪さから継続不能となる症例も少なくないため、治療に対するモチベーションの維持のためにも本研究のような調査結果が裏付けとして必要である。
索引用語 クローン病, 成分栄養療法