セッション情報 サテライトシンポジウム(消化器病学会)

胃ESDにおける新展開

タイトル 消サテ6-1:

胃ESD後の胃潰瘍治療―新たなるエビデンス構築を目指して―

演者 宮原 良二(名古屋大附属病院・光学医療診療部)
共同演者 廣岡 芳樹(名古屋大附属病院・光学医療診療部), 後藤 秀実(名古屋大附属病院・光学医療診療部DELIMITER名古屋大大学院・消化器内科学)
抄録 近年、日本胃癌学会ガイドラインでは早期胃癌に対する内視鏡治療として内視鏡的粘膜下層剥離術(endoscopic submucosal dissection:ESD)を用いることが推奨され、従来の内視鏡治療比べて、より大きな病変に対する低侵襲な治療が可能となってきた。しかしながら、ESDの普及ともに、ESD後に起こる消化管出血をはじめとした合併症のリスクやESD施行後に生じる浅く大きい胃潰瘍の治療の質が新たな問題として浮上してきた。最近では、胃ESD後の消化管出血や胃潰瘍治療に関する様々な報告が散見されるようになった。胃ESD後の消化管出血予防では、PPIによりH2受容体拮抗薬と比べ消化管出血リスクが有意に減少することや、内視鏡治療前のPPI投与による出血リスクの低下が示されている。また、胃ESD後の胃潰瘍の治癒に影響を及ぼす因子としては、潰瘍径や潰瘍部位が報告された。さらには、H.pylori除菌治療が内視鏡治療後胃潰瘍の治癒を促進することや、胃ESD後の胃潰瘍においてH.pylori陽性例ではH.pylori陰性例と比べ胃潰瘍の再発が多いことも明らかとなってきている。我々は、現在イルソグラジンマレイン酸塩のPPI単独投与に与える治癒率の上乗せ効果についての臨床検討を進めている。本剤は、H.pylori除菌治療後にプラセボと比べ有意に胃潰瘍治癒を促進し、H2受容体拮抗薬と比べてその効果に差が無いことが示されており、ESD後の胃潰瘍への効果が期待できるものと考えている。ここでは、最近報告されている胃ESD後の消化管出血予防や胃ESD後の胃潰瘍治療に関するエビデンスを紹介するとともに、当施設及び関連施設にて実施している防御因子増強剤のESD後の胃潰瘍治癒促進に関する臨床検討についても述べたい。
索引用語