セッション情報 パネルディスカッション6(消化吸収学会・消化器病学会・消化器内視鏡学会・消化器外科学会合同)

消化吸収の側面からみた炎症性腸疾患の病態と栄養療法

タイトル 消PD6-17追:

Infliximabの長期予後から Elemental dietの適応を考える

演者 横山 陽子(兵庫医大・内科(下部消化管科))
共同演者 福永 健(兵庫医大・内科(下部消化管科)), 松本 譽之(兵庫医大・内科(下部消化管科))
抄録 Infliximab(IFX)に代表される生物学的製剤の早期導入による所謂top-down治療は、近年小児クローン病(Pediatric CD; PCD)患者にもその適応が拡大されつつある。未だ根治治療のないCD患者では発症早期の治療方針の非常に重要であり、PCD患者においては疾患活動性制御のみならず、患者QOLの維持や成長障害の予防など並行して勘案すべき案件は多種多様であり、特に栄養療法(Elemental diet; ED)の占めるポジションは非常に重大である。そこで今回、我々はPCDに対するIFXの治療効果と栄養障害の関わりについて検討し、 EDの必要性について考察した。対象と方法:発症年齢が17歳以下で、top-downでIFXを導入したPCD患者15例を対象とした。IFX導入前の平均CDAIは256.3±88.7点であった。平均ED摂取量は420kcal/日で免疫調節剤の併用例はなかった。CDAI≦150を臨床的寛解とした。IFX開始10週および54週後のIFXの臨床効果を臨床的寛解群と非寛解群に分け両群の患者背景を比較検討した。結果:IFX開始10および54週間後の臨床的寛解率は66.7%, 40.0%であった。2群間におけるIFX開始時(0週時)の各臨床背景の比較では、年齢[歳](R群vs NR群:15.2±1.5 vs 12.8±1.5)が10週時の、体重[kg](R群vs. NR群=53.4±7.2 vs. 42.5±11.7)が54週時の寛解維持効果と有意な相関が認められた。また病型における比較では小腸型で有意な血清アルブミン値[g/dl]の低値を認めた(3.1±0.2)。結語:成人発症症例における検討や、欧米におけるPCDに対する成績と比較して、本検討の54週時における寛解維持率は低い結果となった。これは我々がhepatosplenic T cell lymphomaを始めとする併用合併症の潜在リスクを勘案してPCD症例に対して免疫調節剤を併用していなかったことが大きな要因であると考察されるが、同時に特に栄養吸収に大きな障害が生じうる小腸型症例で有意な栄養障害が示唆されたことより、今後IFX導入時の小児発症・低体重症例や小腸型に対してはEDの併用を積極的に考慮するべきであると示唆された。
索引用語 小児クローン病, インフリキシマブ