セッション情報 パネルディスカッション7(肝臓学会・消化器病学会・消化器がん検診学会合同)

肝疾患の病態に及ぼす血小板の意義

タイトル 肝PD7-1:

血小板減少は肝線維化の増悪因子である

演者 小玉 尚宏(大阪大大学院・消化器内科学)
共同演者 疋田 隼人(大阪大大学院・消化器内科学), 竹原 徹郎(大阪大大学院・消化器内科学)
抄録 【目的】近年血小板が肝再生を促進させることやウイルス肝炎時の細胞障害性免疫を惹起することが明らかとなり、血小板と肝疾患の密接な関連が報告されている。一方血小板減少は進行した慢性肝疾患に高頻度で認められる合併症である。これは肝線維化進展によるTPO産生低下や脾機能亢進の結果を反映しており、血小板数は肝線維化進展のバイオマーカーとして用いられている。しかし逆に、この血小板減少が肝線維化に及ぼす影響についてはこれまで詳細な検討はされていない。そこで今回我々は遺伝子改変により血小板減少マウスを作成し検討を行った。【方法】Bcl-xL floxedマウスとPf4-Creトランスジェニックマウスを交配することにより、血小板寿命を制御することで知られるBcl-xLを血小板特異的に欠損させたマウスを作成した。このマウスと野生型マウスに対して総胆管結紮術(BDL)を施行し肝線維化について評価した。また、in vitroにおいて肝星細胞に対する血小板の作用について検討した。【成績】Bcl-xL欠損マウスは野生型マウスと比し著明な血小板減少を呈していた。BDL後血小板減少マウス(Bcl-xL欠損マウス)では野生型マウスと比し肝臓でのI型コラーゲン遺伝子発現が増強し肝線維化が増悪した。In vitroにおいて、マウス血小板は活性化によりHGFを放出し、Met経路を介して肝星細胞のI型コラーゲン産生を抑制した。BDL後野生型マウスでは肝内に血小板が集積し、血漿中HGF濃度の増加、肝組織中のMet活性化を認めるのに対して、血小板減少マウスではいずれも減弱していた。BDL後両マウスに対するHGF補充治療により、血小板減少マウスでのI型コラーゲン遺伝子発現の増強並びに肝線維化の増悪は野生型マウスと同程度まで改善した。【結語】血小板減少は肝線維化進展の結果のみならず増悪因子であることが示された。また、血小板が肝星細胞でのI型コラーゲン産生抑制という抗線維化作用を有することが明らかとなった。以上より、慢性肝疾患患者において血小板数の維持・増加が肝線維化進展抑制の治療手段となりうることが示唆された。
索引用語 肝線維化, 血小板減少