セッション情報 パネルディスカッション7(肝臓学会・消化器病学会・消化器がん検診学会合同)

肝疾患の病態に及ぼす血小板の意義

タイトル 肝PD7-2:

慢性肝疾患/肝硬変患者の血小板減少症における血栓性合併症の意義について

演者 伊倉 義弘(高槻病院・病理科)
共同演者 岩井 泰博(高槻病院・病理科), 若狭 研一(大阪市立大大学院・診断病理学)
抄録 【目的】血小板減少は慢性肝疾患/肝硬変における重要な合併症であり,肝障害度の指標ともなりうる.従来,門脈圧亢進により腫大した脾臓での血小板の補足および破壊亢進が重視されてきたが,トロンボポエチン(TPO)など血小板数に与る因子はきわめて多岐にわたり,未だに全てを把握するには至っていない.今回我々は,血小板の産生および補足/破壊/消費の各側面から,病態生理機序の解明を図るべく,以下の検討を行った.【方法】大阪市立大学附属病院および高槻病院で病理解剖となった慢性肝炎19例/肝硬変79例を対象とした(男性71名,年齢68±9歳;ウイルス性74例,アルコール性19例,その他5例).死亡直前の血小板数に加え、解剖所見から脾臓重量および骨髄巨核球数を,さらに血栓性合併症(門脈血栓症,肺塞栓,播種性血管内凝固症候群など)の有無を調査した.これら血小板数に影響をおよぼしうる因子と,血小板減少との関連性の有無につき解析した.【成績】血小板数は慢性肝炎に比べ肝硬変で有意に減少しており(15±12 x104/μl vs. 9.5±7.3 x104/μl; p=0.012),巨核球の減少(1.9±0.5/hpf vs. 1.5±0.7/hpf; p=0.036),脾臓重量の増加(142±82g vs. 261±178g; p=0.006)を伴っていた.単因子解析では,血小板数は巨核球数と正相関(R=0.34; p=0.001)を示す一方,脾臓重量とは有意な関連性を認めなかった.血栓性合併症は28例にみられ,血小板数の有意な減少を伴っていた(7.1±4.1 x104/μl vs. 12±9.5 x104/μl; p=0.010).多変量回帰分析でも,巨核球数と血栓性合併症の有無は,それぞれが独立して血小板数に関連する因子(R=0.33; p=0.001およびR=-0.24; p=0.011)であった.【結論】慢性肝疾患/肝硬変患者では,TPO低下による血小板産生の減少に加え,血栓性合併症による血小板消費の亢進が,末梢血小板数の減少に深く関連していることが明らかとなった.またそれは脾腫による血小板の補足/破壊亢進よりも,大きな影響を与えている可能性が示された.
索引用語 血小板減少, 血栓性合併症