抄録 |
【はじめに】肝虚血再灌流障害は,再灌流後のKupffer細胞の活性化と好中球,内皮細胞の相互作用による微小循環障害がその原因と考えられているが,再灌流直後の肝類洞内の血小板動態についての報告は少ない.当研究室では生体蛍光顕微鏡システムを用いて肝類洞構成細胞である類洞内皮細胞およびKupffer細胞と血小板に着目し,再灌流後早期の類洞内動態についてreal-timeで検討してきた.【目的】再灌流後早期の肝類洞内における血小板動態を生体蛍光顕微鏡で観察し,類洞内皮細胞およびKupffer細胞との相互作用を明らかにする.【対象と方法】SD雄Ratを非虚血群,および虚血群(全肝虚血20分)に分け,虚血群ではさらにdichloromethylene disphosphonateを用いたKupffer細胞除去群, anti-rat platelet serumを用いた血小板減少群を設定した(各群n=6).開腹後肝左葉を脱転.蛍光色素封入リポソームを虚血60分前に頸動脈カテーテルより投与することでKupffer細胞を蛍光標識した.血小板は再灌流後30,60,120分時に1×108個の蛍光標識血小板を投与し,その類洞内動態を生体蛍光顕微鏡で観察した.非虚血群では肝虚血以外の操作を施行した.【結果】類洞内皮に膠着する血小板数は非虚血群では一定だったのに対し,虚血群では再灌流時間とともに有意に増加した(p<0.05).Kupffer細胞除去群および血小板減少群においては,膠着血小板数は虚血群に対し減少した(p<0.05).組織学的評価では虚血群で,Kupffer細胞の多く分布するzone1において組織障害が強く認められ,TUNEL染色でApoptosisが強く誘導された.電子顕微鏡像では再灌流後30分の早期に血小板とKupffer細胞が直接膠着している現象を画像ではじめて確認した.【結語】虚血再灌流後早期での血小板の類洞内皮細胞およびKupffer細胞への膠着現象が,その後の微小循環障害の引き金になっていると考えられた. |