セッション情報 パネルディスカッション7(肝臓学会・消化器病学会・消化器がん検診学会合同)

肝疾患の病態に及ぼす血小板の意義

タイトル 肝PD7-4:

C型慢性肝炎における末梢血血小板減少を肝臓への血小板集積から再考する

演者 近藤 礼一郎(久留米大・病理学DELIMITER久留米大病院・病院病理部)
共同演者 矢野 博久(久留米大・病理学), 鹿毛 政義(久留米大病院・病院病理部)
抄録 【目的】健常者において血小板はその12~24%が肝臓に分布するが, 慢性肝炎に伴う血小板分布の変化はよく分かっていない。今回, ヒト肝組織に見られる血小板を病理学的に明らかにし, 肝臓への血小板集積がC型慢性肝炎に伴う末梢血血小板減少に関与するかを検討した. 【方法】当院にてC型肝炎ウイルス関連肝細胞癌で肝切除された38例を対象とした. 対象の肝組織は非癌部が新犬山分類でF1: 10例, F2: 10例, F3: 8例, F4: 10例で, 癌部の組織型が高分化2例, 中分化35例, 低分化1例であった. 全症例の肝組織にCD41, CD68, PDGFR-β, αSMAの免疫染色を行い, 血小板, Kupffer細胞, 肝星細胞について免疫組織学的な検討を行った. さらに, 非癌部および癌部における血小板とKupffer細胞の面積を, 5ヶ所ずつ無作為に選択し画像解析ソフト(WinROOF)を用いて解析した. また, 電子顕微鏡で非癌部の血小板と類洞壁細胞の関係を観察した. 【成績】非癌部では, 炎症が強い門脈域周囲の類洞に血小板集積は目立ち, 肝線維化に伴い類洞の血小板面積は漸増した(p=0.015). 一方で末梢血血小板数は肝線維化に伴い漸減した(p=0.001). 血小板集積が目立つ門脈域周囲の類洞にはPDGFR-βを発現した肝星細胞が見られ, 電子顕微鏡では血小板は類洞内皮細胞に粘着し, その周囲に線維芽細胞様の肝星細胞を認めた. 癌部では, 非癌部より血小板面積, Kupffer細胞面積とも小さかった (血小板面積: 492±823 vs. 3643±4055μm2, p=0.001; Kupffer細胞面積: 450±841 vs. 3012±3051μm2, p=0.001). 【結論】C型慢性肝炎において, 類洞への血小板集積は末梢血血小板減少に関与し, さらに肝星細胞の活性化に関連することが示唆された. 慢性肝炎の末梢血血小板減少には, 脾機能亢進症以外に肝臓への血小板集積も考慮する必要がある.
索引用語 血小板, 慢性肝炎