抄録 |
【目的】健常者において血小板はその12~24%が肝臓に分布するが, 慢性肝炎に伴う血小板分布の変化はよく分かっていない。今回, ヒト肝組織に見られる血小板を病理学的に明らかにし, 肝臓への血小板集積がC型慢性肝炎に伴う末梢血血小板減少に関与するかを検討した. 【方法】当院にてC型肝炎ウイルス関連肝細胞癌で肝切除された38例を対象とした. 対象の肝組織は非癌部が新犬山分類でF1: 10例, F2: 10例, F3: 8例, F4: 10例で, 癌部の組織型が高分化2例, 中分化35例, 低分化1例であった. 全症例の肝組織にCD41, CD68, PDGFR-β, αSMAの免疫染色を行い, 血小板, Kupffer細胞, 肝星細胞について免疫組織学的な検討を行った. さらに, 非癌部および癌部における血小板とKupffer細胞の面積を, 5ヶ所ずつ無作為に選択し画像解析ソフト(WinROOF)を用いて解析した. また, 電子顕微鏡で非癌部の血小板と類洞壁細胞の関係を観察した. 【成績】非癌部では, 炎症が強い門脈域周囲の類洞に血小板集積は目立ち, 肝線維化に伴い類洞の血小板面積は漸増した(p=0.015). 一方で末梢血血小板数は肝線維化に伴い漸減した(p=0.001). 血小板集積が目立つ門脈域周囲の類洞にはPDGFR-βを発現した肝星細胞が見られ, 電子顕微鏡では血小板は類洞内皮細胞に粘着し, その周囲に線維芽細胞様の肝星細胞を認めた. 癌部では, 非癌部より血小板面積, Kupffer細胞面積とも小さかった (血小板面積: 492±823 vs. 3643±4055μm2, p=0.001; Kupffer細胞面積: 450±841 vs. 3012±3051μm2, p=0.001). 【結論】C型慢性肝炎において, 類洞への血小板集積は末梢血血小板減少に関与し, さらに肝星細胞の活性化に関連することが示唆された. 慢性肝炎の末梢血血小板減少には, 脾機能亢進症以外に肝臓への血小板集積も考慮する必要がある. |