セッション情報 ワークショップ1

タイトル 研-06:

明らかな基礎疾患を有しない門脈血栓症の1例

演者 岸 昌廣(福岡大学病院 消化器内科)
共同演者 岩田 郁(福岡大学 医学部 消化器内科), 松本 照雄(福岡大学病院 消化器内科), 花野 貴幸(福岡大学病院 消化器内科), 阿南 章(福岡大学病院 消化器内科), 竹山 康章(福岡大学 医学部 消化器内科), 入江 真(福岡大学病院 消化器内科), 釈迦堂 敏(福岡大学病院 消化器内科), 早田 哲郎(福岡大学病院 消化器内科), 向坂 彰太郎(福岡大学 医学部 消化器内科)
抄録 症例は30歳代の男性。2006年9月下旬より39℃前後の発熱が続くため10月上旬に近医を受診し抗生剤と解熱剤を処方されたが、この時の採血で高度の炎症反応(白血球数 21200/μl、CRP 28.1mg/dl)を指摘されたため当院を紹介された。外来で行った超音波検査にて門脈左枝内に実質エコー像が認められたため、敗血症と門脈血栓症の疑いにて緊急入院となった。緊急に血管造影を行ったところ、上腸間膜静脈から門脈本幹と肝内門脈左枝に血栓を認めたため、上腸管膜動脈にリザーバーを留置し、リザーバーよりウロキナーゼの投与を行った。1週間のウロキナーゼ投与により、上腸間膜静脈から門脈本幹の血栓は消失したが、肝内門脈左枝の血栓のみ溶解できなかった。経過観察中に複数回行った血液培養検査はすべて陰性であった。血栓症の原因検索を行ったが、腹部CT検査にて門脈本幹と門脈左枝内の血栓、左上腹部の浮腫状小腸壁および同部の腸間膜のリンパ節の腫脹のみで、その他には、有意な所見は認めなかった。ウロキナーゼによるリザーバー治療後にワーファリンによる抗凝固療法を行ったが、腹部超音波やCT検査にて血栓の増悪は無く、血栓症を起こしやすい基礎疾患も無いことなどより、その後ワーファリンも中止して厳重な経過観察を行った。治療から10ヶ月間経過観察を行っているが、状態は完全に安定しており、新たな血栓の出現もなく、唯一残存した病変である肝内門脈左枝の血栓は完全に器質化し、動脈による代償性血流も認めるようになった。門脈血栓症の基礎疾患としては、肝硬変や凝固異常および炎症性腸疾患による重篤な腸炎の報告が多いが、本症例は明らかな基礎疾患を有さずに門脈血栓を発症した。本症例ではCT検査にて腸炎が疑われたが、腸炎に伴う下痢や腹痛の症状は乏しく、後日行った経肛門的小腸内視鏡検査にても炎症性腸疾患を疑わす所見は認めなかった。また、近医で処方された抗生剤の影響も考えられたが、便培養においても腸炎を起こしうる有意な菌は検出されなかった。今回、明らかな基礎疾患を有しない門脈血栓症の1例を経験したので報告する。
索引用語 門脈血栓症, リザーバー