セッション情報 ワークショップ1

タイトル 研-37:

膵性胸水が診断契機となった仮性膵嚢胞の一例

演者 志垣 博信(熊本中央病院)
共同演者 近本  亮(熊本中央病院), 鶴田  豊(熊本中央病院), 田嶋 ルミ子(熊本中央病院), 那須 二郎(熊本中央病院), 高野  定(熊本中央病院)
抄録 膵性胸水は急性・慢性膵炎の経過中に膵管が破綻するか,あるいは膵仮性嚢胞が破裂し,膵液が腹腔内に漏れ,食道裂孔,大動脈裂孔を経て縦隔内に達することによって発生した胸水である.我々は膵性胸水を契機に診断,治療へと至った慢性膵炎に伴う仮性膵嚢胞を経験したので報告する.症例は65歳男性.アルコール歴は日本酒1~1.5合/日.7月上旬より食欲低下,咳嗽,夜間仰臥位での呼吸困難を自覚した.7月中旬近医受診し,両側胸水貯留と低酸素血症を指摘され当院呼吸器科紹介となった.血清アミラーゼの上昇,胸腹部CTにて左優位の両側胸水貯留,複数の膵石,膵尾部に嚢胞性病変及び周囲に液体貯留を認め仮性膵嚢胞と診断した.その後胸水穿刺ドレナージを行ったところ黒褐色の排液を認め,排液中アミラーゼ45760IU/Lと高値を示したため,膵性胸水と診断した.胸腔ドレナージ及び蛋白分解酵素阻害剤による保存的加療にて,自覚症状は改善し嚢胞は縮小したが,膵性胸水の排液は継続した.内視鏡的逆行性膵管造影にて尾側主膵管の破綻部より腹腔内へ造影剤の漏出を確認した.術前説明の上,外科的治療を希望され膵体尾部切除を施行した.切除標本では膵石の近傍で主膵管,膵実質が破綻し,瘻孔を形成していた.また瘻孔は食道裂孔に向かって連続していた.術後経過は良好で合併症なく退院した.膵性胸水についての若干の文献的考察を加え報告する.
索引用語 仮性膵嚢胞, 膵性胸水