セッション情報 |
パネルディスカッション7(肝臓学会・消化器病学会・消化器がん検診学会合同)
肝疾患の病態に及ぼす血小板の意義
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タイトル |
消PD7-5:PSEによる血小板増加が肝再生・肝発癌・肝線維化に及ぼす影響
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演者 |
石川 剛(山口大大学院・消化器病態内科学) |
共同演者 |
岩本 拓也(山口大大学院・消化器病態内科学), 坂井田 功(山口大大学院・消化器病態内科学) |
抄録 |
【目的】部分的脾動脈塞栓術(PSE)の血小板増加効果はすでに証明されているが、本研究ではPSEによる血小板増加が肝再生・肝発癌・肝線維化に及ぼす影響について検討する。【方法】2007年9月~2011年10月に当科で施行したPSE 45症例(平均年齢65.1歳、男/女=22/23、HBV/HCV/アルコール/その他=3/38/3/1、Child-Pugh分類A/B/C=26/18/1)を対象とし、治療前後(1ヶ月後)の血液検査・画像検査・エラストグラフィの結果を用いて各種解析を行った。【成績】平均脾梗塞率/梗塞容積は80.4%/380.0cm3で、PSE1ヶ月後の平均血小板増加率は2.2倍(6.6→13.8x1010/l)であった。多変量解析で抽出された血小板増加(前値の2.2倍以上)に寄与する因子は「術前血小板数」と「脾梗塞容積」であり、データマイニング解析で得られた「術前血小板数;6.7x1010/l未満」かつ「脾梗塞容積;390.15cm3以上」の条件を満たす14例の平均血小板増加率は2.8倍であった。またPSEによる脾容積縮小(373.3→138.2cm3)に伴って、TPOの増加(63.4→75.9pg/ml)とPAIgGの減少(317.8→131.5ng/107cells)が認められた。増殖因子などのサイトカインの変化(PSE前後比)をELISA(血清)で検討した結果、PDGF-AA(2.2倍)・PDGF-BB(2.4倍)・PDGF-AB(5.3倍)・EGF(6.4倍)・HGF(1.3倍)・TGFα(1.2倍)・TGFβ1(1.6倍)・VEGF(4.5倍)はいずれも有意に増加し、またMMP2(1.2倍)・MMP9(5.9倍)も共に増加傾向を示した。これらの変化に伴って、総ビリルビン値・直接ビリルビン値・PT活性・ALT値・Child-Pugh scoreは有意に改善し、さらにFIB-4・APRI値および肝弾性値は有意に低下した。一方PSE前後でAFP(L3)・PIVKA2に有意差はなく、画像上も明らかなHCC発癌・再発は認められなかった。【結論】PSEによる血小板増加には様々なメカニズムが関与しており、「術前血小板数」と「脾梗塞容積」で予測可能である。またPSEがもたらす血小板増加は、増殖因子などのサイトカインを介して、肝再生を促進し肝線維化を抑制する可能性が示唆された。 |
索引用語 |
PSE, 血小板 |