| 抄録 |
【はじめに】虫垂切除後の遺残虫垂から腺腫や癌が発生し、病的症状を呈することはまれである。今回我々は虫垂切除後の遺残虫垂から発生したと考えられる盲腸粘液癌の1例を経験したので報告する。【症例】患者は78歳女性。76歳時急性虫垂炎に対し虫垂切除術を受けている。2007年5月便秘を主訴に近医を受診、精査の結果盲腸部に隆起型腫瘍を指摘された。生検の結果高分化型腺癌の診断を得、手術目的で当科に入院となった。腹部CTでは回腸末端部から盲腸、上行結腸部に8cm大の腫瘍として認められ、回腸末端部への浸潤が疑われた。大腸内視鏡検査では盲腸部に中央にdelle様のulcerationを伴い粘膜下腫瘍の形態を呈する1型隆起性病変として認められた。進行盲腸癌の診断で、6月にD3郭清を伴う回盲部切除術を行った。肉眼的には、回盲部から盲腸、上行結腸にかけて主に壁外性に85x60x45mm大の巨大な腫瘍を認め、腫瘍は回盲弁と上行結腸に穿通していた。回盲弁に接する盲腸には粘膜面に1型腫瘍を認めたが、虫垂口は確認できなかった。また漿膜面からも虫垂を確認できなかった。病理組織結果は粘液癌であった(muc, pAI, Ly2, v0, pN0, sStage II, pR0, fCur A)。病理学的には、盲腸の腫瘍周囲に虫垂へと連続していたと考えられる筋層が認められ、この中に粘液癌の主体が連続していることから、腫瘍の発育経過は盲腸の虫垂開口部から回盲弁付近に発生した癌が遺残虫垂内に進展、虫垂口を閉鎖し、虫垂内で癌性のmucoceleを形成し上行結腸と回盲弁に穿通したものと考えられた。また腫瘍が腹腔内に穿破せず上行結腸および回盲弁に穿通していたことで、腹膜偽粘液腫の発生が防止されたと考えられた。【まとめ】虫垂切除後の遺残虫垂から発生したと考えられる盲腸粘液癌の1例を経験した。虫垂切除の際には、根部で虫垂を切除することが重要であると考えられた。 |