セッション情報 一般演題

タイトル 41:

内視鏡的粘膜下層剥離術に際し止血に難渋したアルコール性肝障害を伴う胃噴門部癌の一例

演者 松坂 浩史(原三信病院 消化器科)
共同演者 柏原 由美(原三信病院 消化器科), 山田 隆史(原三信病院 消化器科), 兼城 三由紀(原三信病院 消化器科), 中村 典資(原三信病院 消化器科), 荒木 譲(原三信病院 消化器科), 千々岩 芳春(原三信病院 消化器科), 河野 眞司(原三信病院 臨床病理部)
抄録 症例は77歳,男性.体重減少を主訴に前医に入院となった.日本酒6合/日×40年の大量飲酒歴もあり,体重減少の原因はアルコール多飲と食事摂取量の減少によると考えられた.その際施行された上部消化管内視鏡検査で胃噴門部に病変を指摘,精査加療目的で当科紹介となった.
採血上は胆道系優位の肝機能障害,軽度の貧血,低アルブミン血症を認めたが,凝固系に異常なく,血小板も26.8×104/μLと低下を認めなかった.腹部USでは肝臓先端鈍化,辺縁の軽度凹凸あり,脾腫,腹水を認めなかった.胃噴門部の病変は径25mm程のIIa+IIc病変で術前の予測深達度はM/SM1,生検では高分化型腺癌の診断であり内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)を施行する方針とした.
内視鏡上は食道,胃噴門部に静脈瘤を認めず,胃穹窿部に静脈拡張が目立つ程度であったが,20MHz細径プローブを用いた超音波内視鏡検査では胃噴門部の病変直下の粘膜下層内に拡張した脈管が描出された.アルコール性肝障害による門脈圧亢進症,胃噴門部静脈叢の拡張が示唆され,ESDに際し出血のriskが高い事が予測された.
2006年1月10日ESDを施行,粘膜切開を行ったところ,立て続けに湧出性,噴出性出血を認めた.以後Forced凝固モードによる粘膜下層浅層までの粘膜切開を心がけ,視認可能な血管に対し止血鉗子を用いたpre-coagulationを行い,粘膜下層の剥離を進める事とした.しかし極めて頻回な止血処置のため切除終了まで290分と長時間を要した.切除標本は50×35mm,病変は23×12mmで一括切除であった.
病理診断の結果 SM1までの浸潤を伴う中~高分化型腺癌で,断端陰性.脈管侵襲,潰瘍所見を認めなかった.また粘膜下層内には著明に拡張した血管を多数認め,静脈瘤の所見であった.
アルコール性肝障害を背景に病変直下の粘膜下層内の血管拡張を伴った胃噴門部癌に対しESDを施行し,術中止血に難渋した一例を経験した.内視鏡上は病変部周囲に明らかな静脈瘤を認めず,超音波内視鏡検査で術前にその存在を認識する事が可能であった.
索引用語 内視鏡的粘膜下層剥離術, 静脈瘤